東北地方太平洋沖地震被災地域の皆さまへ 歴史資料保全についてのお願い
                                                                                                     歴史資料ネットワーク
 
 このたびの地震・津波により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げるとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。

 これまでも大規模な災害が起きるとそれを契機に家や蔵、公民館や集会所などに古くから保管されていた歴史資料が盗難にあったり、被災地の混乱につけ込んで売られたり、捨てられたりすることが多く、それにより、家族や地域の大切な記憶が失われてしまうということが起こっています。生活の再建など大変な時期かと存じますが、家族や地域の記憶をつないでいく歴史資料の保全をお願いする次第です。水濡れ、保存方法、保管場所など、歴史資料についてお困りの際は、下記の歴史資料ネットワークまで、メール、電話、FAXで気軽にご相談ください。
 
 私たち、歴史資料ネットワーク(事務局・神戸大学文学部内)は、1995年に発生した阪神・淡路大震災の被災地で、歴史資料の救出・保全をおこなってきた、歴史研究者を中心としたボランティア団体です。私たちは、全国の歴史学会など関係団体から支援をうけて、被災地の自治体や住民の皆さまと協力しながら、家や地域で大切に保管されてきた資料の救出や文化財の被害調査などを行ってきました。また、鳥取県西部地震や芸予地震・宮城地震や、2004年の福井水害、兵庫県・京都府北部での水害の際にも被災地における歴史資料の保全に取り組んでまいりました。

 またこの間、NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク、山形文化遺産防災ネットワーク、ふくしま歴史資料保存ネットワーク、新潟歴史資料救済ネットワー ク、千葉県文化財救済ネットワークなどと協同し、全国規模で歴史資料や文化財の保全活動を行ってまいりました。

  歴史資料は身近なところにあります。国や県、市町村によって文化財に指定されているような著名なものだけが歴史資料ではありません。昔の人の暮らしぶりなど、地域の歴史を知る手がかりとなるものすべてが歴史資料となります。これらのものは、皆さまのお宅の母屋や 蔵、公民館や集会所、あるいはその中の和箪笥、長持・行李、段ボール箱やロッカーなどに収められています。一見すれば紙くずやゴミのようにみえるものでも、実際には貴重な歴史資料である場合がよくあります。 皆さまのお宅や地域の公民館・集会所など身近なところに歴史資料は残されています。
 
 私たちが歴史資料と考えるものは、以下のようなものです。
 ◎古文書(和紙に墨の崩した文字で書かれた帳面や書類など)
 ◎古い本(和綴じの書籍など)
 ◎明治・大正・昭和の古い本・雑誌・新聞・写真・アルバム・絵・記録(手紙や日記など)・ノート
 ◎掛け軸などの書や絵画、古いふすまや屏風(古文書が下貼りに使われている場合がよくあります)
 ◎自治会・農会などの団体の記録や資料
 ◎古い食器・着物、農具、機織りや養蚕の道具など、物づくりや生活のための道具
 
  家や地域の記録としての書類、日記、写真やアルバム、古い書籍や軸物、生産や生活の諸道具などはすべて、家や地域の歴史を伝える貴重な歴史資料です。このように、身近なところにさまざまな形で家族や記録や地域の歴史を伝えるものが数多く残されています。家族や地域の歴史が残ることは、復旧にむけて心の支えになるとともに、地域の復興にも様々な形で役立つことが、これまでの大災害でも明らかになっています。今回の地震により長く伝えられてきた、家族や地域にとって掛け替えのできない歴史資料を私たちは、少しでも残していきたいと考えております。ご協力のほどよろしくお願いします。
チラシはこちら(PDFファイル)からダウンロードできます。
 
◇◆お問い合わせ・ご相談は◆◇
 歴史資料ネットワーク(代表 奥村弘・神戸大学人文学研究科教授)
  〒657-8501 神戸市灘区六甲台町1-1 神戸大学文学部内
  電話&FAX 078-803-5565(平日午後1時から5時)
  e-mail:s-net@lit.kobe-u.ac.jp