愛媛での水損WSの翌日、6月20日(日)10時半より
香川県の観音寺市郷土資料館にて乾燥済みの水損史料を見学いたしました。
(松下・河野・板垣・吉原の4名)
 
観音寺市郷土資料館のある香川県では、
私たちが水損史料保全活動をおこなうこととなった2004年の8月に
台風16号が上陸し、死者3名、負傷者6名、
全壊1戸、半壊7戸、床上浸水8386戸、床下浸水13412戸、一部損壊217戸という
多くの人的・建物被害をもたらしました。
 
通過後の吹き返しによる強い西風、集中豪雨による財田川など河川水位の上昇、
大潮の満潮時期などが重なり、郷土資料館のある観音寺市有明町では深刻な被害がありました。
郷土資料館も土台が少し高くなっていたにもかかわらず、80cmの浸水被害を受け、
建物・施設や収蔵品も被害がありました。
 
私たちは2004年の台風23号や、昨年の台風9号による乾燥済みの水損史料の脱臭問題で
頭を悩ませていましたので、乾燥後の水損史料、しかも高潮被害にあって潮水に浸かった史料が
その後どのようになったのかを確認したく、郷土資料館さんを訪問いたしました。
 
当日は、当時館に勤務されていた久保田昇三さん、
観音寺市教育委員会事務局生涯学習課文化振興係の井上係長さん
当時、郷土資料館で吸水乾燥作業をされた吉田さんにお話をうかがうことができました。
 
被災直後の対応や、被災金属器・古文書・民具の処置について教えていただきました。
古文書については、水損して二日後にはエタノール消毒やコピー用紙を間紙として挿入し吸水乾燥するなどの
処置をおこなったそうです。
臭いをかがせてもらいましたが、水損史料独特の不快な臭いは全く感じられず、
コピー用紙だったため、キッチンタオルで処置した際に発生するエンボス加工の跡もなく
仕上がりはとてもきれいなものでした。
近代史料のうち罫紙の罫線に滲みがある程度で、近世史料に関しては滲みも認められませんでした。
 
9月11日にはJCPの尾立和則さんが現地入りされ、水損史料の処置方法についても指導されたそうです。
2005年の2月から11月まで、ボランティアさんも含めた文書洗浄・乾燥作業をおこない
約2000枚の文書を洗浄したそうです。
洗浄後の文書も市立中央図書館にて拝見しましたが、もちろん腐敗臭もなく、仕上がりは良好でした。
 
泥をかぶっていなかったことが大きいと思われますが、やはり早期の処置が功を奏したのだと思いました。
 
詳しくは、
・四国ミュージアム研究会編『博物館が好きっ!-学芸員が伝えたいこと』中の
 久保田論文「高潮被災古文書と文化財ボランティア-観音寺市郷土資料館の場合-」
・文化財保存支援機構HPの中の「香川県観音寺市郷土資料館 被災資料救援活動」
をご覧ください。
 
休日にもかかわらず、ご対応いただきました
久保田さん、井上さん、吉田さんにこの場をお借りしてお礼申し上げます。
ありがとうございました。(ま)