芸予地震(安芸灘地震・瀬戸内地震)被災地の
歴史資料・文化財関係者の皆さんへ


 このたびの地震でこうむられた大きな被害と、今も続く不自由な生活に対し、謹んでお見舞い申し上げます。
 私たち歴史資料ネットワーク(阪神大震災対策歴史学会連絡会)と、鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワークは、5年前の阪神淡路大震災と、昨年の鳥取県西部地震の被災地で、歴史資料を始めとした文化遺産の救出・保全をおこなってきた歴史・民俗研究者の団体です。私たちは、震災時に、全国の市民・研究者等から支援をうけて、自治体や地元住民と協力しながら、地域社会の民間史料の救出や文化財の被害調査など、被災地における文化遺産の保全・再生の取り組みおこなってきました。
 これらの歴史資料・文化財の保全復旧活動は、少なくない成果をあげましたが、その一方で、損壊建築物の解体の際に焼れたり、撤去・破棄された古文書や民具も少なくありません。阪神大震災の場合、それまであった文化遺産の三分の二が、被災地域から滅失してしまったという報告もあり、始動が地震の約1ヶ月後と遅かったことが反省点にあげられました。この教訓を踏まえ、鳥取県西部地震では、地震直後から活動を開始しましたが、現地の組織体制の早期確立が、今後の課題に残りました。
 今回の瀬戸内地震の被災地は、歴史的環境の豊かな地域として知られています。収蔵施設に保管されているもの、文化財指定を受けているものの他にも、地域のあちらこちらに、先人の営為を伝える歴史資産、文化遺産が数多く存在するはずです。それらが今回の大地震を乗り越えて保全されれば、地域の再生にむけた心の糧になるはずです。古文書や民具・石造物など地域遺産が、震災のせいで姿を消してしまわないよう、関係者は手立てを尽くすべきではないでしょうか。私たちも同じ体験をしたものとして、出来うる限りの支援・協力をしていくつもりです。

2001年3月26日

歴 史 資 料 ネ ッ ト ワ ー ク(略称史料ネット)
代表幹事:奥村 弘(神戸大学助教授)
〒657−8501 灘区六甲台町1−1 神戸大学文学部内
TEL/FAX078−803−5565
URL:http://www.lit.kobe-u.ac.jp/~macchan/welcome.html

鳥取県西部地震(山陰中部地震)被災史料救出ネットワーク
代表:竹永三男〈島根大学教授〉
〒690−8504 松江市西川津町1060 島根大学法文学部気付
TEL0852−32−6191(小林准士研究室)
URL:http://www.hist.shimane-u.ac.jp/eq/index.html