水損資料の取り扱いについて
全史料協のホームページの「文書館防災の手引き」(3の「緊急対応」、3−5−1の「水損資料の取り扱い」)などを参照してください!

泥水に濡れて一見すると廃棄処分せざるをえないような資料でも、きれいな水で泥をすすいだ後にビニール袋に入れて冷凍保存してください。修復できることがあります。捨てないでください!
処分にお困りの際は、当ネットワーク(電話078-803-5565)かお住まいの地域の文書館・歴史博物館・教育委員会などにまずはご相談ください!

ご家庭でも可能な修復・保全方法です(文責:松下正和)

◇◆やってはいけないこと◆◇

  • 冊子を無理にこじあけないでください
  • 天日やアイロンなどで急激に乾燥させないでください
  • 濡れた紙を放置しないでください
  • とにかく捨てないでください!修復できるケースがあります。

◇◆すべきこと◆◇

  • 被災後48から72時間を目安に救助してください(夏場はカビが生えやすくなります)。電気や水道のライフラインの復旧状況が許す範囲内で、下記の対応をお願いいたします。
  • 軽い水濡れの場合
    • 冊子状の場合、ページがはがれるようなら、キッチンペーパーを挟んで吸水処理を行います(但し、無理にこじ開けないでください)
    • 一紙ものの場合、キッチンペーパーで挟んで吸水処理を行います。
    • 皺やカビに気をつけます(薬局などで売っている消毒用エチルアルコールを噴霧するとよいでしょう)
    • そのまま陰干しをしてください。
  • 泥などで汚れている場合
    • コンテナなどにきれいな水をはり、史料を軽く洗浄します(泥を落とす際に、史料に力を加えたり、長時間水につけたりしないでください)
    • 可能であればすぐにキッチンペーパーを挟んで吸水処理を行ってください
    • キッチンペーパーによる吸水乾燥が不可能な場合、形を整えた後、そのままの状態でビニール袋に入れます。封はとくにせず、袋に資料名・元にあった保管場所などを記入しておいてください。
    • 史料を冷凍凍結します(緊急措置としてご家庭の冷凍庫に保存しておいてください)
    • 電気が通っていない場合、可能であればチューブ内に脱酸素剤とともに保存してください。
    • 専門処理機関に真空凍結乾燥法や吸水乾燥法により乾燥させます。専門処理機関については、史料ネットにお問い合わせください。

<水害と紙資料>(全史料協防災委編『文書館の防災に向けて』1998より)
・水害は紙資料の水損を生じさせることがあります。
・浸水は下から進行します。
・水分は毛細管現象により紙に吸着します。
・水を完全に吸った紙資料は膨張し、重量も元の数倍になることもあります。
・濡れた紙は非常に柔らかくなり、裂けやすくなっています。
・製本されたものは、のり部分が剥離しやすくなっています。
・48から72時間でカビが生じることがあります。
・そのまま乾燥すると紙の変色や変形が生じます。

<水損資料救助の方法>(同上)
(1)凍結
 ・方法:透明なプラスチック袋またはラップ、フリーズ紙を用意し、納入する。
 ・可能な限りそのままの状態で、凍結させる。
 ・利点:水損資料は、凍結することで紙の変形や文字のにじみ、カビなどを防止できる。
(2)真空凍結乾燥法
 ・方法:完全に凍結した資料を、真空凍結乾燥機に入れ乾燥させる。
 ・利点:紙が再度濡れることなく、凍結状態のまま乾燥する。
 ・欠点:真空凍結乾燥機が普及していない
(3)(凍結)吸水乾燥法
 ・方法:ごく一部またはかすかに湿っている資料に適応する。特に1枚資料。
 ・解凍は処理可能な量だけとし、完全に解凍してから着手する。解凍するときには、吸水紙や高分子吸収剤を敷く。
 ・直射日光の入らない、風通しの良い、温湿度の低い部屋で実施する。
 ・丁間に吸水紙(ろ紙)などをはさみ、状態を見ながら何度も交換をおこなう。
 ・同時に重しをかけて、しわの発生を防ぐ(押し花の方法)
 ・利点:比較的処理単価が安い。
 ・欠点:乾燥に失敗すると、紙の変形や文字のにじみ、カビが生じる。