歴史資料ネットワーク2003年度活動報告
1 被災史料の整理や被災地での調査活動
事務局保管の資料整理は、院生・学生・市民などのボランティアによって進められた。神戸大学では11回の整理が実施され、のべ127名の参加で約4箱分が終了した。
4月からは機械的に整理作業を進めるだけでなく、参加者がより古文書に親しめるように神戸大学文学部所蔵文書を利用したミニ学習会の時間ももった。
さらに神戸女子大学に移管された文書群は4箱分の整理が終了し、残りの整理は神戸大に場所を移して進行中である。
被災地の総合史料調査を引き継いだ神戸市緊急地域雇用促進特別交付金事業「市民から引き継いだ古文書整理等」事業は、神戸市文書館寄託のものを中心とした約5000点の古文書について目録化とデータ入力・写真撮影の作業を進めるとともに、震災で被害を受けた神戸市長田区内西代協議会所蔵文書の再整理と保存・公開準備作業を、神戸市文書館において行った。さらに神戸大学文学部地域連携センターと神戸市文書館と史料ネットの三者の共同で神戸地域における被災史料についても整理・活用事業を行い、灘区・東灘区で調査を進めた。
- 第10回 2003年6月14日 参加者17名
- 第11回 7月12日 参加者13名
- 第12回 8月30日 参加者11名
- 第13回 9月13日 参加者10名
- 第14回 10月11日 参加者9名
- 第15回 12月13日 参加者15名
- 第16回 2004年1月24日 参加者12名
- 第17回 2月14日 参加者10名
- 第18回 3月13日 参加者9名
- 第19回 4月10日 参加者13名
- 第20回 5月8日 参加者8名
2 市民との連携を重視した地域史研究の取り組み
今年度の歴史講座は「シリーズ歴史遺産を考える」と銘打ち、多彩な形態で4回を実施した。のべ231名の参加があり、研究成果の還元と共に地域の住民や文化団体との交流や意見交換に成果を上げた。
また、神戸大学医学部敷地内で出土した福原教関連遺跡の学術的価値を検討する緊急シンポジウムを成功させ、遺跡の保存に貢献した。各学会より遺跡保存のための要望書が提出され学会誌上でも大きく取り上げられた。
さらに、シンポジウム「地域資料の保存と活用を考えるJを共催したほか、下記の催しを後援した。
- 1回「中世の国際交流と兵庫津」
- 2003年9月27日(土)13:30~16:30 @福厳寺 参加54名
- 報告:藤田明良氏(天理大学教授)「アジアのなかの中世兵庫津」・伊藤幸司氏(山口県立大学助教授)「国際交流と禅宗寺院」、共催:兵庫津の文化を育てる会、後援:兵庫区役所・神戸大学地域連携センター、協力:巨鼈山福厳寺
- 第2回「地域遺産としての自然海岸」
- 2003年12月6日(土)13:30~16:30 @ 深江会館 参加48名
- 報告:坂江渉氏(神戸大学文学地域連携センター主任研究員)「古代の浜辺と生活・信仰・伝承―西摂・神戸の松原海岸」・友野哲彦氏(神戸商科大学助教授)「自然海岸の持つ経済的価値―環境経済学の立場から」 、共催:神戸大学文学部地域連携センター、後援:芦屋市教育委員会・神戸市教育委員会・西宮市教育委員会・兵庫県教育委員会
- 第3回「兵庫津から神戸へ―ミナトと周辺の村々」
- 2004年3月27日(土) 13:30~16:30 @生田文化会館 参加102名
- 報告:桑田優氏(神戸国際大学教授)「兵庫開港―近代神戸の始まり」、秋宗康子氏(KOKORO和KOBE)「須磨の村々と兵庫津」、後援:神戸市文書館、KOKORO和KOBE
- 第4回 歴史まちづくりトークサロン
- 2004年4月24日(土)14:00~17:00@伊丹郷町館・石橋家住宅 参加27名
- 司会:石川道子氏・辻川敦氏、共催:神戸大学文学部地域連携センター
「シリーズ歴史遺産を考える」以外の企画
- 主催事業 緊急シンポジウム「平家と福原京の時代―楠・荒田町遺跡の評価をめぐって」
- 2004年1月10日(土) 10:00~17:00@神戸大学瀧川会館 参加184 名
- 報告:須藤宏氏・岡田章二氏・高橋昌明氏・元木泰雄氏・佐伯真一氏
- 後援事業 「淡河町の歴史と文化を考える」講演会
- 2003年7月5日&2004年1月25日 主催:淡河町自治協議会、淡河ふれあいのまちづくり協議会
- 後援事業 第5回「火垂るの墓を歩く会」
- 2003年8月5日&9日 主催:「火垂るの墓を歩く会」実行委員会
- 後援事業 〈わがまち再発見〉よみがえれ!白鳳の大伽藍「猪名寺廃寺市民フォーラム」
- 2003年9月21日 主催:自然と文化の森協会
- 後援事業 第3固まちづくりシンポジウム「バーチャル富松城歴史博物館から見えてきたもの」
- 2003年9月28日 主催:富松城跡を活かすまちづくり委員会
3 震災記録保存と地域史料保存
2003年5月17日の総会に合わせてフォーラム「歴史資料の保存・活用と地域社会」を開催した。また、7月13日に大阪歴史科学協議会が実施した「阪神・淡路大震災記念人と防災未来センター見学と検証のつどい」を共催し、9月23日に同センターでもたれた「第2回震災資料の保存・活用に関する地域連携研究会」に参加した。
さらに、11月29日にシンポジウム「地域資料の保存と活用を考える」を朝日新聞大阪本社、大阪歴史科学協議会、大阪歴史学会、(財)公害地域再生センター(あおぞら財団)、NPO法人西山夘三記念すまい・まちづくり文庫と共催した。
4 災害対策
2003年5月26日に発生した震度6弱の三陸南地震の対策のため、メーリングリストを立ち上げて情報交換にあたるとともに、被災地の関係者に「東北地震被災地の歴史資料・文化財関係者の皆様へ」(5月27日)、報道機関に「東北地震被災地に歴史資料・文化遺産への注意を喚起する記事掲載のお願い」(5月28日)を発信した。ほぼ同じ地域で7月26日に震度6弱の宮城県北部地震が発生した。これに対し、同28日に前回同様に地元と報道機関にお見舞いと被害確認依頼を発信すると共に被災自治体にもお見舞いと被害確認依頼を兼ねたアピールを発信した。8月1日には現地で被害の視察と対応の協議をおこない、同4日に神戸でその緊急報告会をおこなった。地元関係者も翌5日に「宮城地震歴史資料救済ニュース」の配信開始、10日に被害調査とレスキュー実施と動きを始め、9月初旬には宮城資料ネットが立ち上がった。当史料ネットでは、8月23日の2回目の調査レスキューにボランチィアが参加したのを始め、募金の呼びかけや各方面への支援要請など現地と緊密に連絡を取りながら、その始動をサポートした。また各学会の協力(学会誌での告知・会場でのカンパ活動)により、募金は307,639円集まった(5月28日現在)。さらに9月26日におきた震度6弱の2003年十勝沖地震においても被災自治体にアピールを発送した。
一方、神戸大学文学部地域連携センター主催の第2回歴史文化をめぐる地域連携協議会「自然災害から地域の遺産を守る」(2004年3月7日開催)においてボランティア団体の役割についてコメン卜した。
また、近年発生が予想されている東南海地震対策として、災害からの文化財保護のためのネットワーク作りに着手した。内閣府における「災害から文化遺産と地域を守る検討委員会」で、京都における文化財レスキューのあり方がモデルケースとされていることをふまえ、その委員・関係者を中心に「京都における文化財防災研究会」を立ち上げた。史料ネットメンバーもその研究会に参加し、京都における災害発生時の文化財保護の問題について検討を行った。
5 組織と運営
ホームページの整備をすすめ、各方面への情報発信の充実をはかった。関東大震災80周年記念集会(2003年8月30日・31日)では、「阪神淡路大震災と歴史学」と題し、史料ネットの活動について報告を行った。ニュースレターは、5回(2003年6月26日第33号、9月11日第34号、11月26日第35号、2004年2月16日第36号、5月20日第37号;ただし第33号は2002年度号)発行した。メールニュースは2003年9月より軌道に乗り27回を発信している。また総括集の出版に向けた出版社との交渉を開始した。この1年間の書籍販売実績は、計170,917円の売上(『神戸と平家』79 冊、シンポ記録集32冊、『史料ネット総括集』11冊)があった。最後に5月28日現在の会員は136名・6学会、サポーター50名、ニュースレター購読者57名である。
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