1.被災史料の整理や被災地での調査活動
阪神・淡路大震災や2004年台風23号、東日本大震災、2018年台風21号で保全した史料などのうち、事務局保管の未整理分について整理作業を進めるという活動方針に基づき、以下の整理作業を行った。
〔2004年台風23号に伴う文書整理とクリーニング作業〕
2004年台風23号によって被災した田尻一雄家文書(兵庫県豊岡市)は現在、所蔵者からの寄贈をうけ、史料ネットが保管している(段ボール10箱)。乾燥作業は完了しているものの、固着展開や、汚れ・臭いの除去が課題として残っていた。今年度も、絵画修復専門家の谷村博美氏の指導のもと、「被災文化財修復ワークショップひぶわ」と協力し、大阪芸術大学短期大学部伊丹学舎にてクリーニング作業を行った。今後も継続して処置を続ける必要がある。また、被災史料の臭気分析研究のサンプルとして文書の一部を東北歴史博物館へ貸し出した。
〔東日本大震災被災資料クリーニング作業〕
2011年5月6日に岩手県大船渡市の紙本・書籍保存修復家の金野聡子氏および京都造形芸術大学の大林賢太郎氏らによって救出された、大船渡市赤崎町S家の資料群について、津波被災した近現代史料の一部(衣装ケース約4箱分)を宮城資料ネットより受け入れ、2016年3月より月2回のペースでボランティアによるクリーニング作業を行ってきた。2016年12月にこの作業は完了し、現在は写真撮影作業に移行している。今年度は第33回から第36回まで計4回実施した。
また、2019年3月16日に東北大学で開催された公開フォーラム「被災地と史料をつなぐ-歴史資料の被災状況と保存技術の共有-」において、加藤明恵(運営委員)が、上記資料群の内容を紹介する報告を行った。
〔2018年台風21号被災史料クリーニング・整理作業〕
2018年9月の台風21号で、神戸市内・大阪市内からレスキューした史料について、2019年1月からボランティアを募集してクリーニング・整理作業を続けている。本年度は第1回から第6回まで計6回実施した。
2.市民や自治体との連携を重視した地域史研究や地域遺産保存・活用の取り組み
今年度はシンポジウムのほか、地域史卒論報告会などを開催した。
〔史料ネット主催・共催シンポジウム・講演会〕
2019年2月23日のシンポジウム「地域歴史資料の魅力―集う・学ぶ・活かす―」は、当初、総会後に実施する予定であったが、西日本豪雨によって日程を延期したことから、総会とは別の日程で開催し、西日本豪雨や台風21号に関する特別報告をプログラムに加えた。吉原大志(史料ネット)は2018年の風水害対応の現状について特別報告を行った。井上舞氏(神戸大学)は、地域住民と共同で行う地域歴史資料の整理作業の実践について、兵庫県内での経験を踏まえながら、市民参加型の資料保全のあり方を提起した。佐藤宏之氏(鹿児島史料ネット)は、資料保全活動と学校教育との連携について、地方国公立大学の現状も踏まえながら鹿児島県内での事例をもとに報告した。これをうけて、大国正美(史料ネット)が、最近の文化財保護法改正の動向を整理しながら、地域歴史資料の活用をめぐる諸課題についてコメントした。それぞれ、地域における歴史資料の保全と活用について、その担い手を意識した議論であり、意見交流も活発に行われた。また、今年度もインターネット中継を行った。
〔「シンポジウム地域資料の保存と活用を考える」実行委員会への参加〕
今年度は特段の活動はなかった。
〔地域史卒論報告会〕
神戸史学会との共同企画「地域史卒論報告会」は14回目を開催した。これは、大学院には進学せず一般企業などへ就職し、かつ主に兵庫県を中心とした阪神地域をフィールドとする地域史を卒論のテーマにした学生が市民の前で報告を行うという企画で、歴史系の大学で勉強した学生が、社会に出た後も地域遺産や史料を守る活動を続けるきっかけづくりとすることを目的としている。今回も報告数が多かったため、午前中からの開催とした。いずれも地域に根差した研究成果であり、卒論での成果を社会に広く還元するという本企画の目的を達成することができた。また、報告者を幅広く募るために、学会等を通じて報告候補者の情報を集める方法について議論があった。次年度からの実施を検討する。
〔兵庫区歴史講演会〕
兵庫区まちづくり課と共同で実施している兵庫区歴史講演会を、本年度も開催した。神戸市が北前船寄港地として日本遺産の認定を受けたことから、今回は「近世兵庫津の世界」をテーマとし、大国正美・河野未央が講演を行った。
〔「火垂るの墓を歩く会」への協力〕
「火垂るの墓を歩く会」は、野坂昭如氏の小説『火垂るの墓』ゆかりのスポットを通して戦争の歴史を学ぶための集まりで、『尼崎市史』を読む会(尼崎市立地域研究史料館主催)の世話人メンバーが中心になって、1998年に会がつくられた。当会は、神戸空襲を記録する会とともに、その実行委員会に参加し、会の広報や当日の運営補助の面で協力してきた。本年度は第20回目を実施した。ここ数年は参加人数が多く、移動中の安全確保に課題があることから、西宮・御影各コースの解説講座を行う形式とした。
〔第5回全国史料ネット研究交流集会〕
「第5回全国史料ネット研究交流集会」を開催した。今回は新潟大学(新潟市)を会場に、実行委員会および大学共同利用機関法人 人間文化研究機構を主催に実施した。本集会にあたって当会は、後援団体として名を連ねた。集会では2日間にわたって、矢田俊文氏の講演、天野真志氏の事業報告のほか、全国各地で被災史料保全活動に取り組む10団体からの口頭報告、13団体からのポスター発表が行われ、当会からは仲田侑加(運営委員)がポスター発表を行った。新潟県内を中心に、多くの参加者による意見交換を通じて、各地の活動に関する情報共有と、団体間の交流を深めることができた。
〔芦屋市親王寺の屏風解体調査〕
2016年10月から史料ネット運営委員の河野未央を中心に、芦屋古文書に親しむ会のメンバーなど、市民ボランティア有志とともに芦屋市親王寺が所蔵する古文書や古典籍の調査を行ってきた。2017年6月からは史料ネットが窓口となってボランティアを募集し、同寺が所蔵する屏風の解体および下張り文書はがし作業を実施している。2017年度に実施した計10回の調査を通じて、親王寺の所蔵する屏風の解体調査および掛軸等の美術資料の調査を終えたことから、本年度は11月3日に現地報告会を実施した。約60名が参加するなど盛況であった。
〔三田市屏風の下張り文書調査〕
三田市内に在住する所蔵者から、屏風の保全について連絡を受けた。本年度は屏風を預かるとともに、解体調査を行った。9月18日から20日、5月6日、7月6日には、ボランティアを募集し、解体作業および下張り文書の整理作業を実施した。解体にあたっては、平田正和氏(工房レストア)、尾立和則氏からの指導を受けた。次年度においても作業を継続するとともに、11月23日に現地説明会を実施する予定である。
主催◎、共催○、後援●、参加・協力△
△第20回 火垂るの墓を歩く会
【西宮コースについての解説講座】
2018年8月7日(火)
【解説内容】小説『火垂るの墓』と著者野坂昭如氏自身の戦中体験について、西宮市内のゆかりのスポット、ウォークコースの紹介(ニテコ池、回生病院、香枦園浜など)
会場:夙川公民館、参加者:約50名
【御影コースについての解説講座】
2018年8月11日(土)
【解説内容】小説『火垂るの墓』と著者野坂昭如氏自身の戦中体験について、御影周辺のゆかりのスポット、ウォークコースの紹介(御影公会堂、火垂るの墓の碑がある石屋川公園、成徳小学校など)
会場:御影公会堂、参加者:約50名
主催=「火垂るの墓を歩く会」実行委員会
協力=神戸空襲を記録する会、歴史資料ネットワーク◎兵庫区歴史講演会「近世兵庫津の世界」
2018年9月29日(土)@兵庫公会堂
【講演】大国正美「兵庫津と北前船―「開港場」の土台づくり―」、河野未央「江戸時代兵庫津のまちの仕組みと生活文化」
主催:兵庫区民まちづくり会議、歴史資料ネットワーク、兵庫区役所
協力:ひょうご観光ボランティア
参加者:約150名◎親王寺所蔵史料報告会
2018年11月3日(土)@親王寺(芦屋市)
【報告】河野未央・寺井正文・橋本寛子・室山京子
参加:約60名●第5回全国史料ネット研究交流集会
2018年11月17日(土)/ 11月18日(日)@ 新潟大学
基調講演:矢田俊文(新潟大学人文学部教授/元新潟歴史資料救済ネットワーク事務局長)「災害史研究と複合広域災害・資料保全」
事業報告:天野真志(国立歴史民俗博物館特任准教授)「「歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業」が目指すもの」
【1日目の報告】鈴木あかり(愛媛資料ネット/愛媛大学大学院M1)「西日本豪雨と愛媛資料ネットの取組」、上村和史(岡山史料ネット)「広域災害への対処をめぐって―西日本豪雨被災資料、救出・保全の現場から―」、西向宏介(広島県立文書館)「広島県における「平成30年7月豪雨」被災文書の保全活動」、三国信一・田邊幹(新潟県立歴史博物館)「新潟県立歴史博物館の広域支援の取り組み」、田中洋史(長岡市立中央図書館文書資料室)「長岡市立中央図書館文書資料室と新潟歴史資料救済ネットワーク―14年間の連携を振り返って―」、白井哲哉(茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク/筑波大学)「原子力災害の被災自治体における資料レスキューから災害アーカイブズの構築へ」、佐藤大介(NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク/東北大学災害科学国際研究所)「東日本大震災後の自然災害被災地への支援―個人的経験から―」
【2日目の報告】佐藤宏之(鹿児島歴史資料防災ネットワーク/鹿児島大学)「鹿児島歴史資料防災ネットワーク、再始動―少ない人数で広範囲な地域の歴史資料を保全するために―」、松山真弓・山内利秋(宮崎歴史資料ネットワーク)「隣接地域間での連携について考える」、宇野淳子(神奈川地域資料保全ネットワーク)「他地域の経験に学び、みずからの地域で活かす―神奈川資料ネットの活動から―」
【ポスター発表】ふくしま歴史資料保存ネットワーク(渡邉歩)、千葉歴史・自然資料救済ネットワーク(小関悠一郞/大関真由美)、歴史資料保全ネット・わかやま(蘇理剛志)、歴史資料ネットワーク(仲田侑加)、歴史資料保全ネットワーク・徳島、愛媛資料ネット(峯松拳大)、熊本被災史料レスキューネットワーク、鹿児島歴史資料防災ネットワーク(深瀬浩三)、被災建物・史料救援ネット(長谷川順一)、中越防災安全推進機構(玉木賢治)、十日町市教育委員会文化財課(村山歩)、人間文化研究機構、国立歴史民俗博物館メタ資料学研究センター
主催:第5回全国史料ネット研究交流集会実行委員会、大学共同利用機関法人 人間文化研究機構(基盤機関:国立歴史民俗博物館)
共 催:独立行政法人国立文化財機構、科学研究費補助金基盤研究(S)「災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立―東日本大震災を踏まえて―」(研究代表者:奥村弘)研究グループ
後 援:新潟大学人文学部、新潟大学災害・復興科学研究所、新潟史学会、新潟歴史資料救済ネットワーク、歴史資料ネットワーク、岡山史料ネット、広島歴史資料ネットワーク、山陰歴史資料ネットワーク、愛媛資料ネット、山形文化遺産防災ネットワーク、ふくしま歴史資料保存ネットワーク、宮崎歴史資料ネットワーク、鹿児島歴史資料防災ネットワーク、茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク、神奈川地域資料保全ネットワーク、歴史資料保全ネットワーク・徳島、岩手歴史民俗ネットワーク、福井史料ネット、三重県歴史的・文化的資産保存活用連携ネットワーク、千葉歴史・自然資料救済ネットワーク
参加者:約150名◎歴史資料ネットワーク2018年度シンポジウム「地域歴史資料の魅力―集う・学ぶ・活かす―」
2019年2月23日(土)@神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ
【特別報告】吉原大志(歴史資料ネットワーク)「歴史資料ネットワークによる2018年の災害対応について」
【報告】井上舞(神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター)「地域での『保全』と『活用』を考える」、佐藤宏之(鹿児島歴史資料防災ネットワーク)「資料保全活動と学校教育の連携の可能性―鹿児島資料ネットの取り組み―」
【コメント】大国正美(歴史資料ネットワーク)
参加者:34名、インターネット配信視聴者数:約10名◎第14回 地域史卒論報告会
2019年3月10日(日)@兵庫勤労市民センター
【報告】木村美菜(大阪市立大学)「浄土宗法善寺―大坂の都市構造をもとに―」、藤岡琢也(大阪市立大学大学院)「拠点移動からみる戦国期赤松氏権力の特質」、中村愛(大阪教育大学)「太平洋戦争末期の満州移民政策と第十三次大兵庫開拓団―分村計画樹立から開拓団の最期まで―」、栩山楓菜(大阪市立大学)「和泉今在家における「村」と地主小作関係」
主催:神戸史学会、歴史資料ネットワーク、参加者:30名
3.震災記録保存と文化財防災
〔文化財保護法改定をめぐる動向へのパブリックコメント及び声明への賛同〕
2017年8月31日、文化庁文化審議会文化財分科会企画調査会が、「中間まとめ」を発表した。そのなかでは、地域社会の現状と文化財の継承、およびその担い手を不可分のものとして捉え、特に未指定文化財にも言及する視点を取り入れるなど、文化財の保存と活用について重要な点を含むものであった。ただし、当会の活動ともかかわる災害時や平時における歴史資料の保全・活用に関しては、より具体的に検討すべき点が少なくないことから、文化庁が募集したパブリックコメントに対して、9月27日付けで意見提出を行った。また、日本歴史学協会は10月6日付けで26学協会との連名で「文化財保護法の改定に対し、より慎重な議論を求める声明」を発表したことをうけ、当会も関係学会の意向確認を行ったうえで、同声明へ賛同した。これらの動きについては、『史料ネット News Letter』86号に特集記事を掲載した。
なお、2018年第196回国会(通常国会)において、文化財保護法を改正する法律が成立し、2019年4月1日より施行されることとなった。この改正に関するパブリックコメントに対して、2018年12月に意見提出を行った。
〔水損史料修復ワークショップと市民講座・学会等での報告・講演〕
今年度も引き続き、水損史料修復ワークショップと市民講座・学会等での報告・講演を下記の通り行った。
今年度は、運営委員や事務局員が全国各地で精力的にワークショップを行ったほか、資料保全に関わる学会等での報告も多数行い、史料ネットのこれまでの活動蓄積を積極的に発信し、各地史資料ネットや学会との共有に努めた。
参加・協力
奥村弘「鹿児島の歴史再発見-新しい地域文化像を求めて-」(鹿児島大学・人間文化研究機構協定締結記念シンポジウム)、2018年9月29日、鹿児島大学
奥村弘「全体集会「資料がつなぐ大学と博物館」(全体コメント)」(国立歴史民俗博物館共同研究「総合資料学の創成と日本歴史文化に関する研究資源の共同利用基盤構築」平成30年度全体集会)、2019年3月4日、山形大学
奥村弘「全国史料ネットの取組み~大学との連携~」(平成30年度研究協議会(日本博物館協会))、2019年3月8日、北海道博物館
奥村弘「全国へ広がった史料ネットの活動-1995年阪神・淡路大震災から2018年自然災害へ-」(公開フォーラム 被災地と史料をつなぐ-歴史資料の被災状況と保存技術の共有-)、2019年3月16日、東北大学災害科学国際研究所
加藤明恵「災害からの史料レスキュー-水損史料ワークショップを通して-」(伊丹市立博物館平成30年度「やさしい古文書教室」)、2018年12月14日、伊丹市中央公民館
加藤明恵「大船渡被災資料の整理作業報告と史料紹介」(公開フォーラム 被災地と史料をつなぐ-歴史資料の被災状況と保存技術の共有-)、2019年3月16日、東北大学災害科学国際研究所
川内淳史「神戸からみた東日本大震災-後方支援から広域支援体制へ-」(宮城資料ネット講演会)、2019年7月6日、東北
学院大学
松岡弘之「オープンサイエンスと地域文書館」(JAPAN OPEN SCIENCE SUMMIT 2019)、2019年5月27日、学術情報センター
松岡弘之「災害資料保存とデジタルアーカイブ―その現状と課題」(デジタルアーカイブ学会第3回研究大会)、2019年3月16日、京都大学
松下正和・佐藤大介・天野真志・甲斐由香里・内田俊秀「水損被害を受けた紙媒体資料の歴史情報復旧に向けた検討」、2018年7月21日、東北大学災害科学国際研究所
松下正和「地域の歴史資料の調査・活用法~「ホンモノ」に出合う」(教員免許状更新講習)、2018年8月23日、姫路大学
松下正和「襖下張りはがしの作業方法と伊藤家下張り文書からわかったこと」、2018年8月28日・29日、岐阜市歴史博物館
松下正和「被災資料保全活動論」(平成30 年度長期アーカイブズ・カレッジ)、2018年9月7日、国文学研究資料館
松下正和「平成30年度大阪大学博物館実習」、2018年9月13日、大阪大学総合学術博物館
松下正和「文化財の救出-水濡れ歴史資料を救う方法-」(いなみ野学園大学院講座)、2018年10月2日、いなみ野学園
松下正和「古代の請戸」(福島県浜通りの歴史と文化の継承-『大字誌ふるさと請戸』という方法-)、2018年10月13日、せんだいメディアテーク
松下正和「歴史文化を活かしたまちづくり-住民主体の地域調べ活動-」(関西建築保存活用サミット第7回『失われた建築の記憶保存・継承活動』検討会)、2018年10月17日、於自敬寺(大阪市淀川区)
松下正和「古文書発見!?ふすまの紙はがし大作戦」(「歩こう!文化のみち」イベント)、2018年11月3日、愛知・名古屋戦争に関する資料館
松下正和「水ぬれ資料を救おう-被災資料の救出と日頃の備え-」(H30年度文書等保存利用研修会)、2018年11月12日、北海道立文書館
古田雅一・Nguyễn Thị Thùy Linh (大阪府大院・工・量子)・松下正和・天野真志・内田俊秀・酒井浩一・藤田和久・吉川圭太、「水損和紙資料(古文書)に発生したカビの放射線殺菌に関する基礎的検討」(第54回日本食品照射研究協議会研究発表会)、2018年11月20日、東京都立産業技術研究センター本部東京
松下正和「大規模自然災害から博物館資料・民間所在資料を守る」(平成30年度岐阜大学博物館資料論・ワークショップ)、2018年11月28日、岐阜大学教育学部
松下正和「大規模自然災害から博物館資料・民間所在資料を守る」(関大日本史・水損史料吸水乾燥ワークショップ)、2018年12月12日、関西大学
松下正和「海陽町の津波記念碑について」(海陽町歴史カフェ(基盤研究(C)近世南海地震記録の現代語訳化))、2018年12月22日、阿波海南文化村
松下正和「播磨の災害史(1)-古代・中世の山崎断層系地震」、2019年1月11日、姫路市生涯大学校
松下正和「古代の文献史料にみる和泉の災害」(泉北教養講座)、2019年1月16日、泉ヶ丘ビッグアイ
松下正和「円通寺襖下張り文書はがしの作業方法・文書内容解読成果報告会」(氷上郷土史研究会)、2019年1月19日
松下正和「播磨の災害史(2)-播磨地域をも襲った南海地震」、2019年2月1日、姫路市生涯大学校
松下正和「大規模災害から館蔵資料・民間所在資料を守る」(大阪自治体史連絡協議会)、2019年2月15日、箕面市立郷土資料館
松下正和「地域歴史遺産と地域史」、2019年2月22日、姫路市生涯大学校
松下正和「誰にでもできる水濡れ資料の応急処置法」、2019年2月23日、日高町中央公民館(和歌山県)
松下正和「歴史文化を活かしたまちづくり-住民主体の地域調べ活動」(令和元年度兵庫県いなみ野学園大学院講座)、2019年5月17日、いなみ野学園
松下正和・及川規・芳賀文絵・森谷朱・松井敏也・天野真志・安田容子「乾燥処理した水損資料の揮発成分特性について-課題と対策-」(第41回文化財保存修復学会)、2019年6月23日、帝京大学
松下正和「重要な公文書や大切な写真等を守る 水損・汚損資料の応急処置~南海地震に備えて~」(和歌山県社会教育関係職員等研修会)、2019年7月17日、田辺スポーツパーク
松下正和・天野真志・佐藤大介・安田容子・加藤諭・添田仁・内田俊秀「被災した紙媒体資料を対象とした安定的な保全技術活用の検討」(平成30年度東北大学災害科学国際研究所共同研究成果報告会)、2019年7月20日、東北大学災害科学国際研究所
〔阪神・淡路大震災資料の保存・活用に関する研究会(被災地図書館との震災資料の収集・公開に係る情報交換会)〕
2019年2月9日に神戸大学で開催された「第19回阪神・淡路大震災資料の保存・活用に関する研究会」に参加した。なお同研究会は、2011年度より東日本大震災被災地の大学・図書館と阪神・淡路大震災に関する資料保存機関を結ぶ「被災地図書館との震災資料の収集・保存に係る情報交換会」と共同開催している。今年度の研究会では、柳沼賢治氏(福島大学)より、福島県における東日本大震災関連資料の収集について報告がなされたほか、橋本唯子氏(和歌山大学)からは和歌山における災害に関わる資料保存活動について、杉本和夫氏(神戸市行財政局文書館分室)、深井美貴氏(人と防災未来センター)からは、それぞれ阪神・淡路大震災資料についての報告がなされた。意見交換の場では、参加各館より震災資料の収集・保存に関する現状と課題が紹介されると共に、資料の保存方法や活用について、活発な議論が交わされた。
4.災害対策
〔東日本大震災・長野県北部地震〕
2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)とそれに伴う津波災害、およびその翌日に発生した長野県北部地震について、史料ネットでは震災発生直後より被災地の史資料ネットの活動の立ち上がりを支援するとともに、被災地後方より活動のバックアップを行ってきた。また2011年4月に文化庁の提起によって結成された被災文化財等救援委員会(2013年3月解散)の構成団体として参加し、同委員会による文化財レスキュー事業の一翼を担った。2014年7月には、旧救援委員会の枠組みを引き継ぐ形で、独立行政法人国立文化財機構によって「文化財防災ネットワーク推進事業」が開始され、史料ネットも当事業による文化遺産防災ネットワーク推進会議の参画団体となり、当会議に出席し、全国の関係団体と意見交換を行っている。
また、宮城資料ネットがレスキューした大船渡市赤崎町S家の資料群の被災資料について、2016年から当会が受け入れ、クリーニング・整理作業を進めている。さらに各地の史資料ネットと情報の共有をはかりつつ、必要な支援を継続して行っているところである。
〔2016年熊本地震〕
2016年4月の熊本地震については、当会が熊本史料ネットの活動資金のカンパ受け入れを代行してきた。震災発生から2年が経過し、熊本史料ネットの活動も本格化するなか、当初の目的であった神戸からの活動支援の段階から、現地での継続的な活動の展開という段階へ移ったと判断し、熊本史料ネットと相談した結果、2018年4月から支援募金の窓口を熊本史料ネットへ一元化した。現在も継続的に連絡を取り合っている。
〔大阪北部地震〕
2018年6月18日午前7時58分ごろに大阪府北部を震源として最大震度6弱の地震が起きた。史料ネットは地震発生後からすぐに委員間で情報を共有するとともに、翌19日には臨時委員会を設けて被災地での対応を協議し、20日から緊急事務局体制に移行し、被害情報の収集や関連機関との連絡を続けた。また、大阪府内の被災自治体の文化財担当部局へ依頼文書「大阪府北部地震によって被災した歴史資料・文化遺産の保全についてのお願い」を6月21日付けでFAX送信した。同様の文書を6月24日に開催された大阪歴史学会総会・大会(於大阪市立大学)でも配布した。
当会会員から被災地巡見を通した情報提供があったほか、被災地の資料所蔵機関や自治体職員と連絡を取り、現地調査の具体的な調整の段階にまで至ったものの、後述の西日本豪雨によって、すべて中止となった。被害の全容を把握できないままであり、災害時における関西圏での対応や情報共有をめぐる課題が明らかとなった。
〔2018年西日本豪雨・台風21号〕
2018年7月の西日本豪雨をうけ、大阪北部地震対応のための緊急事務局体制を継続した。また、当初7月9日に予定した総会・シンポジウムはそれぞれ同21日、翌年2月23日に延期した。西日本豪雨については、7月11日に緊急委員会(通算190回目)を開催し、同14日付けで支援募金の呼びかけを当会のウェブサイトで行い、その後も学会誌等を通じて呼びかけを継続した。さらに、9月に発生した台風21号については、それに続いた北海道胆振東部地震とあわせ、9月11日に「2018年台風21号および北海道胆振東部地震被災地のみなさま、ボランティアのみなさまへ(歴史資料保全のお願い)」を当会のウェブサイトに掲載し、資料保全の呼びかけを行った。
西日本豪雨の被災地においては、兵庫県豊岡市教育委員会所蔵資料の応急処置および整理作業を行った。また、岡山史料ネット、愛媛資料ネット、広島県立文書館・広島史料ネットによる保全活動に対して、支援募金の送金、ボランティアの派遣、作業物資やノウハウの提供などの面で支援を続けている。また、台風21号については、神戸市内から1件(神戸史学会から連絡)、大阪市内から1件(平野歴史民俗研究会から連絡)レスキューし、現在ボランティアを募集しながらクリーニング・整理作業を継続している。
台風21号による被害の範囲と規模に対して、当会による保全活動に至ったのは上記2件のみであり、さきの大阪北部地震と同様に、関西圏での災害時の対応のあり方を具体的に検討する必要がある。
5.組織と運営
今年度の運営委員会は第191回(2018年8月17日)から第201回(2019年6月5日)までの計11回を開催した。運営委員の委員会への出席率もよく、活発に意見を交わした。
2018年度 運営委員・事務局・会計監査委員一覧(五十音順) ※イタリック表記は事務局員兼任
<運営委員>大国正美(神戸史学会)・奥村弘(神戸大学史学研究会)・小野塚航一(大阪歴史科学協議会)・加藤明恵(個人会員から選出)・川内淳史(個人会員からの選出)・河野未央(個人会員からの選出)・佐賀朝(大阪歴史科学協議会)・仲田侑加(日本史研究会)・永野弘明(大阪歴史科学協議会)・松本充弘(大阪歴史学会)・藤田明良(個人会員からの選出)・松岡弘之(大阪歴史科学協議会)・松下正和(個人会員からの選出)・吉川圭太(個人会員からの選出)・吉原大志(個人会員から選出)
<事務局>浅利文子(事務局員)・跡部史浩(事務局員)・奥村弘(代表)・川内淳史(副代表)・小野塚航一(事務局員)・加藤明恵(事務局員)・藤田明良(副代表)・松岡弘之(事務局員)・松下正和(副代表)・吉川圭太(事務局員)・吉原大志(事務局長)
<会計監査委員>井上舞・久野洋
従来のメールニュースの配信に加え、2012年7月1日に開設したウェブサイトを中心に情報提供を行った。引き続き、ブログを中心とした情報提供を行い、2018年7月21日から2019年6月4日までの訪問数は31,131、ページビューは104,553であった。またtwitterアカウント(@siryo_net)を通じたリアルタイムの情報発信や、facebookページの活用も進めている。ニュースレターは、3回(2018年10月12日第89号、2019年2月15日第90号、2019年6月14日第91号)発行した。なお、過去に発行したニュースレター(第1号~第70号)のPDF化データは、神戸大学附属図書館震災文庫のウェブサイトで公開している。
2019年6月1日現在の会員数は学会会員8団体、個人会員151名(昨年比5減)、学生会員9名(昨年比1減)、サポーター52名(昨年比6増)、ニュースレター購読57名(昨年比3減)の計277名(昨年比3減)である(2018年度いっぱいでの退会予定者は差し引き済)。史料保全活動に関わるボランティア登録数は、2019年6月4日現在128名である。
なお、読売新聞社主催の第13回読売あをによし賞の特別賞を受賞した。6月16日の授賞式(リーガロイヤルホテル)には運営委員が参加した。
6.出版および論文などの掲載
史料ネット委員による論文などの掲載は下記の通りである。
奥村弘「大規模自然災害時の歴史研究者と大学の役割-地域の記憶を歴史として継承するために」(歴史学研究会編『歴史を未来につなぐ 「3・11からの歴史学」の射程』東京大学出版会、2019年5月)
奥村弘・阿部浩一・大門正克・北原糸子・保立道久「座談会 シリーズ「3・11からの歴史学」の射程」(同書所収)
加藤明恵「(シリーズ:ごぞんじですか?)歴史資料ネットワーク」(『専門図書館』294号、専門図書館協議会、2019年3月)
川内淳史「津波被災史料からみる大船渡の近代-地域社会の記録にみる自然・開発-」(歴史文化資料保全の大学・共同利用機関ネットワーク事業 シンポジウム報告書2018「歴史が導く災害科学の新展開Ⅱ-人の記録、自然の記憶-」、2019年3月)
松下正和『水ぬれ資料を救おう-被災資料の救出と日頃の備え-2018(平成30)年度文書等保存利用研修会記録』、北海道立文書館、2019年3月
松下正和「被災古文書の応急処置」(『かびと生活』12号、NPO法人カビ相談センター、2019年6月
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