古い記録、古文書(こもんじょ)、写真・・・ 残しておきたいものを捨てないですむように、ご家庭でできる簡単な処置方法をご紹介します。もっとも、完全に乾かすためには、専門家の技術が必要です。お困りになった際は、いつでもご連絡ください。相談に応じます。以下では、簡易な方法を紹介します。
やってはいけないこと
- 冊子を無理にこじあけないでください。
- 天日やアイロン・ドライヤーなどで急激に乾燥させないでください。電子レンジでの乾燥も歴史資料を傷めます。
- とにかく捨てないでください!
- ⇒迷った際はすぐにご連絡を!
応急措置の方法
原則
全てを行う必要はありません!電気や水道のライフラインの復旧状況が許す範囲内で対応してください。
用意するもの
ペーパータオル(キッチンペーパー)・エタノール・スプレーボトル(霧吹き/エタノールを史料に噴霧する際に利用)・新聞紙・マスク・ゴム手袋(薄手のもの)・竹べら・水をはったパレット
作業を行うにあたっての留意点
- エプロンか作業着を着用。あるいは汚れてもいい服装で行う。
- マスクは必ず着用すること。また、エタノールを扱う際にはゴム手袋を着用すること。
- 常に換気を行うこと(可能であれば除湿機の作動、扇風機での送風を加える/空気清浄機を作動させることができればなおよい)。
- 30分に1回は必ず休憩をはさむこと(長時間連続で作業に従事することがないように心がける)。
- 作業終了後、うがい、手洗いを必ず行うこと。
- 指輪・時計・ブレスレット・ネックレス・ヘアピンなど、史料に損傷を与える危険のあるものははずしておく。袖の釦(特にカフス等)が気になる場合は、腕まくりをしておく。
紙の歴史資料について
軽い水濡れの場合
- 防カビのため消毒用エタノール(エチルアルコール)を噴霧してください(可能であれば一日一回)。
- 直接日光の当らない、通気性のよい場所で陰干しをしてください。室内で乾かす場合は、可能であれば、扇風機などを利用し、空気が循環するように心がけてください。ただし、歴史資料に直接風をあてるのは避けてください。
水濡れがひどい場合(応急措置)
- ①:新聞紙の上にペーパータオルを敷き、そのうえに史料をのせる。
- ②:ページが開きそうな箇所を確認し、ページを開く。開きにくい場合は、竹べらを用いて展開する。
- 必ずしも一枚ずつページを展開する必要はない。
- 臭いがきつい場合はページ全体にエタノールを噴霧すること。
- ③:開いたページにペーパータオルを挿入し、一度冊子を閉じる。
- 表紙の上にペーパータオルをもう一枚置き、その上から軽く押さえてペーパータオルに水分を移動させる(吸水させる)。
- 必ず一度冊子を閉じること。開いたまま押さえると、綴じを傷める可能性がある。
- ④:再びペーパータオルを挿入したページを開き、挿入したペーパータオルを抜き取る。新しいペーパータオルを用意したのち、別のページを開く。
- ⑤:②~④の繰り返し。エタノールの噴霧、綴じの部分の水気をとることは、意識して入念に行うこと。
- ⑥:全てのページが展開できるようになり、かつ触った際に水分が手のひらに移らなくなったら、作業完了。あとは風通しのいい場所で史料を陰干しする。
- 直接日光に当てないこと。史料の変形・劣化・退色が生じる。
泥などの汚れ、カビなどにより損傷がひどい場合
- 泥のカタマリなど、落とせるものは落としてください。消毒用エタノール(エチルアルコール)を噴霧し、そのままの状態でビニール袋に入れます。封はとくにしないでください。
- ⇒この段階で一度、必ずご連絡を入れてください。専門処理機関に真空凍結乾燥法や吸水乾燥法により乾燥させます。乾燥作業が終了した後に、お返しいたします。
- 防カビのための処置で最もよいのは、冷凍凍結です。ご家庭の冷凍庫でも対応可能です。
写真の場合
- 写真プリントは、清潔な水をはった容器の中でゆっくりゆすって汚れを落とします(汚れをぬぐわないでください)。あとは洗濯バサミなどで写真の端をとめて吊るし、直射日光の当らない、通気性のよい場所で陰干ししてください。
- 写真のネガ・フィルムも直接日光の当らない、通気性のよい場所で陰干ししてください。
- 広島県立文書館「土砂災害で被災したアルバム・写真への対処法(手引き)」(2014年12月)
- 富士フイルム「被害を受けた写真・アルバムに関する対処法」
- 千葉大学教育学部ワークショップ「水損写真アルバム救済の応急処置方法」(youtube 2018年12月)
地域の歩みを伝える貴重な歴史資料を守る活動に何とぞご理解・ご協力いただきますようお願い申し上げます。
参考資料
私たちが実際に被災地で活動を行う際、資料保全の呼びかけと簡易修復方法をご案内するために配布しているチラシは次のようなものです。ご参考にしていただければ幸いです。
作業の様子
2013年2月16日に開催しました資料修復ワークショップでの実演の様子を以下でご覧いただけます。
汚水に浸かった図書や書類の応急処置方法
当会の松下正和が作成した、汚水による被害をうけた図書や書類の応急処置方法の再生リストを以下でご覧いただけます。
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