2016年8月に上陸した台風10号により、各地で災害が発生しております(内閣府)。被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。また、亡くなられた方のご遺族に深くお悔やみを申し上げます。

今後被災地の復旧にむけて活動される災害ボランティアや自治体職員のみなさまのご尽力に敬意を表するとともに、被災地の一日も早い復旧・復興を、歴史資料ネットワークとしてお祈りいたしております。

■水や泥で汚れた古い記録を捨てないでください

さて、災害復旧の過程で、水や泥で濡れた古文書などが出てくることがあります。これらは一見するとゴミのように見える場合がありますが、地域の貴重な歴史を記録したかけがえのない財産ですので、安易に処分しないでください。適切な処置法を行うことで、修復することが可能な場合があります。

■そもそも歴史資料って何?

「うちにはそんな古いもの・貴重なものなんてないわ…」とすぐに処分しないでください。国や県や市町村による指定文化財だけが歴史資料ではありません。下記のようなものも、地域や家族・個人の歩みを示す貴重な資料です。
•古文書(くずした文字で和紙に書いたものなど)
•古い本(和紙に書かれて冊子にしてあるものなど)
•明治・大正・昭和の古い本・ノート・記録(手紙や日記など)・新聞・絵
•写真やフィルム、ビデオテープなど
•古いふすまや屏風(古文書が下貼りに使われている場合がよくあります)
•自治会などの団体の記録や資料
•農具、機織りや養蚕の道具、古い着物など、物づくりや生活のための道具など

水や泥で汚れて一見するとゴミにしか見えないものでも歴史資料である場合があります。
これらのものは捨てたり焼いたりせず大切に保管下さい。早急な処置によって、修復が可能な場合があります。

■どこにあるの?

これらのものは
•旧家の母屋や蔵、あるいはその中の木箱や和箪笥、長持など
•公民館のロッカーやその中の段ボール箱などに収められていることが多いようです。

■どこに相談すればいいの?

泥かきボランティアの方は、処分する前に所蔵者に確認してください。また史料所蔵者の方々も安易に廃棄・売却などせず、処置に困ったらお近くの教育委員会や、各地の史料ネットにご相談ください。

行政の方々も復興業務で日々大変なご苦労があろうかと思います。ライフラインが復旧し、文化財業務に戻った段階ででも結構ですので地域の歴史資料の安否確認活動や被災史料の保全活動にご協力賜れば幸いです。

■濡れた資料はどう扱えばいいの?

歴史資料ネットワークのHP「水損資料の取り扱いについて」をご覧ください。

■なぜ保全する必要があるの?

歴史資料ネットワーク(事務局・神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター内)は、1995年に発生した阪神・淡路大震災の被災地で、歴史資料をはじめとした文化遺産の救出・保全をおこなってきた、歴史研究者を中心としたボランティア団体です。全国の歴史学会や関係団体、自治体や市民のみなさまと協力しながら、地域社会の民間資料の救出や文化財の被害調査などに取り組んでいます。

私たちがこのような活動を行ってきたのは、災害が起きるとそれを契機に家や蔵に古くから置かれていた歴史資料が破棄・処分されてしまうことがよくあるからです。これまでも、私たちが駆けつけた時にはすでに歴史資料が処分された後であったということが何度もありました。

家々にはさまざまな形で家の記録や地域の歴史を伝えるものが数多く残されています。しかし、今回の水害により長く伝えられてきた古い文書や記録などがなくなってしまうとすれば、それは家にとっても地域にとっても残念なことといわざるをえません。

地域や家の歴史を復元するための唯一かつ貴重な地域の歴史資料の保全活動にご協力を賜れば幸いです。