9月18日から20日のあいだ
一宮町・佐用町にて水損史料の保全活動を行いましたのでご報告申し上げます。
(史料ネット関係者は文中敬称略にて失礼します)
今回もたくさんの方にご参加いただきました。
また現地には来られなくても、事務局で後方支援してくれている板垣事務局長はじめ
若手の皆さんのご協力にも感謝しています(^^)
町教委の藤木さん、市教委の田路さん、県博の前田さんなど行政の方も
毎回のように私たちの活動にご協力賜っています。
遠くからも応援してくださる方、情報提供してくださる方など
いろんな人の支えがあって成り立っている活動なんだと改めて感じました。
私自身、「支えている」つもりでいましたが、
本当はみなさんに「支えられていた」んだ…と今更ながら気づきました。反省しています(ま)
■9/18(金)第3回宍粟市一宮町レスキュー
・参加:木村・市澤・板垣・松下、一宮町A地区区長
宍粟市教委の田路さんが差し入れに来てくださいました。
・一宮町A地区所蔵の絵図洗浄
前回までの作業で、泥で固着した山林絵図の展開が終了し、
乾燥させていたのですが泥による汚れと汚水による臭いもあり、
また剥がれた箇所を糊付けするにもしわがきつくできそうになかったので
絵図を解体して一紙の状態にし、水洗いすることにしました。
水洗いは、尾立さんに教わった方法で行いました。
計32枚を水洗いした後、吸水紙による乾燥を行いました。
吸水乾燥する際に、不織布の上から「押し法」で吸水すればなかなか吸水が進まず、
一方、不織布をはずし、史料の上から「押し法」で吸水すればエンボス加工の跡がつき、
下手をすれば、弱くなった紙が吸水紙に付着する…
という悩ましさがありましたが、なんとか乾燥が終了し中性紙箱に保管しました。
粗く水分をとるのは新聞紙などを利用し、最後の吸水仕上げにはエンボス加工のない
たとえば「リードクッキングペーパー」などを使うのが良いかもしれません。
ただ、「リード」はネピアの「キッチンタオル」に比べて吸水が遅いのが難点ですね。
次回の作業では、糊付けと簡単な裏打ちをする予定です。
■9/19(土)第7回佐用町レスキュー第1日目
・参加:木村・松下、藤木さん@佐用町教委
奥村・森田・深見・吉原・中岡、横田冬彦さん@京都橘大が9時過ぎから合流
前田徹さん@県博と10時半に久崎G家で合流
日高さん@民博、内田さん@京都造形大と13時半に中上月A家で合流
・久崎で被害状況の説明
19日から参加のメンバーがタクシー2台でG家へ。私・木村ペアと合流しました。
G家付近で、久崎の被害状況とG家の水損史料の概要について私から説明させてもらいました。
・G家資料のクリーニング
その後、G家の水損書画・写真集班と古文書洗浄班とに分かれ、
私と前田さんは、水損書画のクリーニング・計測・撮影を
深見・中岡ペアは水損写真集のクリーニングを行いました。
奥村・森田・横田・吉原・木村チームは文化財調査室でG家文書の洗浄・乾燥・断簡同士の接続作業を行いました。
・A家訪問
午後からは、2班ともA家へ。
その後、奥村・横田・森田・前田さんは民具のクリーニング。
日高さんが民具の補修についての設計をなさってくださいました。
・G家文書の洗浄
松下・木村・深見・吉原・中岡は、調査室にてG家文書の洗浄・吸水乾燥・断簡同士の糊付け作業を行いました。その結果、2点分の文書(皆済目録など)を復元することができました。
吸水乾燥にはキッチンタオルだけではなく、セルロース系のスポンジを先に使用しました。
効果は抜群!随分と紙の節約になりました。
後ほど、「水損レスキューこの一品」というコーナーを勝手に作って
皆さまにご紹介したいと思います(^^)
こんなグッズも使えるよ!という情報があれば、コメント欄にお寄せくださいm(_ _)m
・A家文書の乾燥
9/3にレスキューした分の乾燥作業の続きを行いました。
泥・カビを刷毛ではらい、エタノール噴霧のあと、送風乾燥をしました。
■9/20(日)第7回佐用町レスキュー第2日目
・参加:松下・木村・吉原・中岡・川内、藤木さん@町教委、前田さん@県博
(木村は12時まで、川内は9時から参加)
・G家文書の洗浄、乾燥、糊付け
前日からの継続で、上記の作業を行いました。残りの文書は固着が激しく、剥がすのにも一苦労する「重傷」のものばかりとなりました。乾燥状態で展開できない文書は水漬けし、レーヨン紙をあてがってはがすこととしました。
レーヨン紙を使って剥がす方法は、襖の下張り文書を剥がす時のやり方を参考しました。この方法は、京都造形芸術大学が作成したビデオで勉強しました。
ただ、実際に水漬けしてしまうと素人ではいかんともしがたい下記のような問題に直面しました。
○水漬けすれば、ただでさえ弱っている紙がさらに弱くなり、レーヨン紙を支持体にしても、
剥がすのが難しかったこと
○水漬けすれば、臭いが倍増し、マスクごしでもかなり臭かったこと(なのでエタノール漬けした史料もありました)
○巻紙の状態で固着しているものをはがすのに莫大な時間がかかること
(一折りを戻すのに30分以上かかったことも)
○一枚剥いだつもりが、二枚一緒に剥がしてしまうこと
○剥がす前にあった字が、剥がすことで字が読めなくなってしまった場合があること
(字が載っている紙がうすくなったり、破れたりするため)
○虫喰いの部分を中心に剥がせない場合、紙がよじれて剥がせない場合があること
○仮に剥がせたとしても、紙がばらばらになり、不織布の支え無しには、すきばめなどの処置なしには 一紙の体をなしえないものが出てきたこと
などなど、苦労しました。解体不能と判断した場合は、無理にはがさず固着したまま洗浄しています。
尾立さんをはじめプロの方からのご指導をお願いします。
結局この日は9点の年貢免状・皆済目録を復元し、防虫剤を入れた中性紙封筒につめて、
所蔵者の元にお返しすることができました。
まだ全ての史料について洗浄・復元ができていませんので、今後ともご協力のほどよろしくお願いします。
・小赤松地区の巡回調査
堤防が切れたため、この地区も1m以上の浸水があったようです。
A家:水損の程度が激しい史料は廃棄したとのことでした。
ただ、水損程度の軽い物や、ご当主のお兄 様の書籍・K大在籍時のノート、
木箱入りの自治会文書は残していらっしゃいました。
お宅が大変な中、よく残してくださったと思います。
お兄様の資料は遺品なので捨てがたく残したとのことでした。
私たちが「資料」と思う物が、所蔵者の方にとっては「遺品」として認識される…
ある意味当たり前のことなのですが、私にとってはとても新鮮に感じられました。
残す契機の一つとして色々と考えさせられることとなりました。
蔵にも水損史料が残っている可能性があるそうですが、今は母屋で精一杯とのことでしたので、
チラシをお渡しして、辞去しました。
B家:自治会長さんのお宅で聞き取り。
かつて郷倉に持ち回りの文書があったが廃棄してしまったそうです。
現在の公民館にも古い史料はないとのことでした。
玄関先のピアノを運んで欲しいとの要望を奥さんから受けましたので、
部屋の中まで搬入してさしあげました。男4人がかりで上げましたが、結構重たかったです(>_<)
プロの引っ越し屋さんはすごいです…
久崎より南の地区をまだ巡回できていないので、今後も巡回調査を行いたいと思っています。
また皆さまのご参加をお待ちしております。
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