■史料ネットシンポジウム「災害の記憶と伝承」
(主催=歴史資料ネットワーク)
・日時:2009年4月25日(土)13時半~
・会場:神戸市立新長田勤労市民センター別館 ピフレホール 会議室A
・内容:笹本正治(信州大学教授)氏
「伝承を防災に活かす-天竜川上流域災害教訓伝承手法について-」
相澤亮太郎氏(神戸大学都市安全研究センター学術推進研究員)
「記憶の場所としての災害モニュメント―何が伝わり、何が伝わらないのか?―」
この企画は、若手委員の中野賢治さん(史料ネット副事務局長)発案によるものです。
災害文化史研究の第一人者である笹本さんからは、
天竜川上流域の災害教訓伝承が地域防災力の底上げにどれだけ寄与しうるのかという点に関して、
伊那市・駒ヶ根市・飯田市などを例に取り、その現状と課題についてお話しいただきました。
具体的には、
災害伝承ビデオや、カルタ、データベースなどのさまざまな災害伝承ツールや
学校、自治体、市民との連携による災害伝承の周知方法などを紹介していただきました。
今後の課題としては、事業の継続性やデータの更新、学校全体としての取り組みにするため方策などが
指摘されました。
阪神大震災をはじめ様々な被災地における「災害モニュメント」を研究している相澤亮太郎さんからは、
防災=教訓に回収される「震災の記憶」か、これに反発する慰霊=癒しのための「記憶」か
という震災の記憶を語る際に陥りがちな「防災か慰霊か」という二者択一の視点をいかに
克服すべきかという難しい問題が提起されました。
「震災の記憶」とは何か?ではなく、いかなる「震災の記憶」を伝えようとしているのかが
問われるべきであり、また単に防災化・教訓化に限定することは、「場所の貧困化を招く可能性もある」
という指摘もなされました。
過去の災害に関する個々人の記憶や記録を
終わったこととして検証、教訓化、防災に活用するのか?
それとも、現在もその災害の記憶とともに生きる人々と向き合うのか?
なぜ、あの震災が、あの場所で、あのような形の被害を生んだのか?
阪神淡路大震災自体の検証もまだ途中の段階です。
震災資料の保全や活用といった場合の「活用」についても今後議論を深める必要性を感じました。
とても刺激的な企画だったと思います。報告者のお二方、フロアから発言してくださった参加者の皆さん、企画者の中野さん、ありがとうございました。
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