日本歴史学協会などが主催するシンポジウム「地域史料に未来はあるか? ―史料の保存利用と地域のアイデンティティ― 」が開催されます。

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史料保存利用問題シンポジウム「地域史料に未来はあるか?―史料の保存利用と地域のアイデンティティ―」

小さな地域がみえにくくなっている――平成の大合併により地方自治体が広域となり、庁舎の統合をはじめ、文化施設等の縮小・統廃合によって、きめの細かい住民対応が困難なケースが現れている。大合併による旧自治体の行政文書は、適切に管理・保存されているであろうか。例えば、学校の統廃合による学校文書の現状はどうなっているのか。こうした状況のなかで気になるのは、文部科学省によって公立小中学校の学校区の見直しが検討されるという点である。学校(とりわけ小中学校)は地域コミュニティーの拠点であることも勘案すれば、単に学校のみにとどまらず、地域社会全体に関わる問題といえる。

地域社会ということでは、最近のいわゆる「増田レポート」による「自治体消滅」「地方消滅」が衝撃をもたらしている。農山村の「過疎化」が問題になってから約半世紀、「限界集落」が指摘されてから四半世紀を経るなかで、いかに地域の史料を保存し利活用するのか、私たちは長年この問題に取り組んできたのであるが、「地方消滅」論といった地域切り捨て論に抗して、静かに進行する「史料消滅」をくい止め、ますます地域史料の適切な保存利用を進めるための活動が必要となろう。

現状ではまだまだ不十分ながら、各地で史料保存利用施設の設置が進んできたことは、戦後の史料保存利用運動の成果として十分に評価されよう。しかし、自治体史の編纂などによって、一旦は地域史料の整理・保存の措置が取られても、地域に所在する史料については、その後のアフターケアが十分に行き届かず、適切な保存状態のもとにあるのかも十分に把握されていないケースも多い。平成の大合併によって、それは益々困難になっているように思われる。また、住民意識の面でも、家システムの変化・世代交代と古文書等の史料に対する意識の変化もあり、史料の所在状況が俯瞰しにくい状況にある。

時あたかも、阪神淡路大震災から20年が過ぎ、4年前には東日本大震災を経験した私たちは、日常的な史料保存利用のための活動の必要性を訴えてきたところであるが、救出された被災史料にとどまらず、被災地域の史料保存利用の現状を、地域社会の動向とともに検証することも必要ではないか。

平成の大合併を経て、さらに「地方消滅」論が喧伝されるなか、地域のアイデンティティーを担保する地方行政文書も含む地域史料の保存利用はどのような状況にあるのか、どのような取り組みがなされているのか。地域社会も変貌しているなかで、今あらためて地域史料の保存利用の未来を考えたい。

日 時  2015年6月27日(土)13:30~17:30

会 場  駒澤大学 駒沢キャンパス 1号館204教場

主 催 日本歴史学協会・日本学術会議史学委員会

日本学術会議史学委員会 歴史資料の保存・管理と公開に関する分科会

後 援 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(予定)・日本アーカイブズ学会

 

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開会挨拶:若尾政希(日本学術会議連携会員 一橋大学教授)

報 告

  •  小林 准士(島根大学法文学部教授)
    「島根県における地域資料をめぐる現状と保存問題」
  •  添田  仁(茨城大学人文学部准教授)
    「過疎化する地域の歴史遺産-茨城史料ネットの活動を通して-」
  •  和崎光太郎(京都市学校歴史博物館学芸員)
    「学校所蔵史料の保存と活用―京都市を事例として―」

全体コメント

  • 高埜利彦(日本学術会議会員 学習院大学教授)

閉会挨拶:廣瀬良弘(日本歴史学協会会長 駒澤大学学長)