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震災記録保存

「阪神・淡路大震災をどう伝えるか」。この課題をめぐって、私たち歴史資料ネットワークは、これまでさまざまな形で市民、行政、研究機関、図書館・史料保存機関などとも連携しながら、そのあり方をともに考え、どう実践していくかということに取り組んできました。

 実際、多くの市民や機関・団体の努力によって、震災について多様な形での記録化と保存・活用が実現しつつあります。ことに、県および被災10市10町が出資する(財)阪神・淡路大震災記念協会による、大規模な震災資料調査・収集の取り組みは、現代資料保存・活用の事例として、かつてない成果を生み出しつつあります。

 その一方で、この記念協会による調査・収集資料が収められ、公開されることとなる阪神・淡路大震災メモリアルセンターについては、果たしてそれが、多くの市民や団体の善意によって提供された震災資料保存・活用の場として有効に機能するのか、あるいはそのプランにおいて予定されている他のさまざまな機能・役割についても、十分果たしうる施設となるのかどうか、多くの疑問や批判の声が寄せられています。

 神戸市中央区の東部新都心に、第一期工事60億円、第二期工事も同程度の額を投じて建設される予定のこの施設は、本ニュース2頁から3頁かけて掲げた県作成資料にあるように、防災科学やヒューマンケアに関する研究機能、人材育成、国際的なネットワーク機能、および、震災に関わる資料の網羅的な調査・収集・保存・公開と、震災を忠実に再現した展示という、あまりに多くの機能・役割が予定されています。

第一期工事はすでに着工されており2001年度中に完成予定、第二期工事もこの10月には着工予定ということであり、すでに内容的には固まった施設、言い換えれば批判してもあまり意味のない施設とも考えられます。

 しかしながら、巨額の公費を投じて建設されるこの施設と、そこに込められている機能の重要性に鑑みれば、ここに到っても、なおその計画について議論し、意味を問うていかなければならないと、私たちは考えます。そこで、市民団体として震災資料保存や記録化に取り組む「震災・まちのアーカイブ」とも協力しながら、昨年10月と今年7月の2回にわたって、「阪神・淡路大震災をどう伝えるか」というテーマのシンポジウムを開催してきました。本ニュースの前号でもお伝えしたとおり、去る7月8日(日)に長田区ピフレホールにおいて開催した第2回シンポも、約70人の参加を得て、活発な議論が展開されました。

 その詳細については、本ニュース掲載の加藤宏文さんによるレポートにゆずりますが、議論のなかでも、現メモリアルセンタープランについてのさまざまな問題点や疑念があきらかとなってきました。震災のメモリアルという、まさに被災者をはじめとする市民を主体として、プランを検討しながら造っていくべき施設が、行政主導によって場所も建物も内容も、ごく短期間に決定されてしまうという経緯・事業手法。そこから派生する、計画内容の問題性。あるいは、上記のように、防災とヒューマンケアにかかる研究や人材育成、資料保存・公開(ライブラリー・アーカイブ)機能、震災に関わる展示施設という、関連性はあるとは言えそれぞれ別個の事業を、具体的な検討なしに最初から一つの施設に押し込めてしまっていることによる、施設機能・面積面での大きな疑問。また、そういったそれぞれの事業について検討している関係者・専門家の間ですら、どういう機能をどの程度のウェートをもって実現していくのかという、施設の具体像についてかならずしも共通理解がないままプランが進行しているという現実。

 なかでも、震災資料の関連では、記念協会の資料調査・収集事業が大きな成果をあげており、また資料を提供している被災者や諸団体から大きな期待が寄せられているにもかかわらず、センター構想におけるライブラリー・アーカイブ部門は、現状ではそれにふさわしい位置付けがなされていないとしか考えられません。また展示部門は、専任の学芸員を置く本格的な博物館施設ではなく、展示の中心的部分は業者委託で作成され定期的な入れ替えなどは予定されていないということです。内容的にも、巨大なビルの屋内に震災被災状況をバーチャル風にリアルに再現したり、第二期工事にいたっては人工的な自然空間を作っていやしの場とするという理解に苦しむ内容となっています。

 果たしてこういうプランの進め方でよいのか、実現する施設が、十分その機能を果たせるのか。そういった問題提起をあらためて行なうため、今回のニュースにおいて、シンポジウムの内容紹介を中心とした特集を組みました。「阪神・淡路大震災をどう伝えるか」、この問題について、多くの皆さんに考え、声をあげていただくきっかけになれば幸いです。 (文責・編集部)


  • NGO文化情報部と「震災記録情報センター」
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