記録と記憶をみらいへ

2008年の活動

1. 被災史料の整理や被災地での調査活動

阪神・淡路大震災や2004年台風23号時の保全史料のうち、事務局や豊岡市教育委員会保管の未整理分について整理作業を進めるという活動方針に基づき、以下の整理作業を行った。

2004年台風23号に伴う文書整理と受入

2008年8月2~4、24・25日の計5日間、但馬・国府国分寺館や日高農業改善センターにおいて、豊岡市日高町浅倉地区の田尻早苗氏所蔵文書の仮整理を行った(参加者のべ24名)。田尻家は、2004年の台風23号により蔵の一階部分が水損したお宅である。蔵を解体する際に、史料ネットが2005年8月に段ボール20箱分の史料(古文書自体は2階に保管されていたため水損せず)をレスキューし、同館が救出史料を保管していたものである。同館による救出史料の保管場所の移動計画を契機として、仮整理が行われることとなった。今回の整理作業は、寄贈・寄託手続きを進めるための点数把握(概要把握)を目的としたので、①史料に付箋をつける、②デジタルカメラで史料を撮影する(但し、撮影はスナップ程度のもの。基本的に表紙のみ撮影)、③撮影済み史料についての情報(付箋№・文書名・年代等)をExcelで作成した調査票にその場で入力、④撮影・目録作成済み史料を中性紙箱に詰め替える、という方針で臨んだ。その結果、44箱分約2000点の史料を整理することができた。しかし、中性紙箱10箱以上の史料が未整理のまま残っており、09年度以降改めて整理することとなった。現在、史料は日高文化財収蔵庫で保管されている。なお、整理作業にあたっては、豊岡市教育委員会や但馬・国府国分寺館から会場提供や整理作業へのご協力を賜った。
また、同市日高町浅倉地区の田尻一雄氏から寄贈された資料のうち、屏風の下張り剥がしを11月18日と2月10,11日の計3日行った。表から一層ごとに剥がす通常の方法とともに、屏風全体を水で濡らし骨から下張り全体を剥がす方法についても検討をおこない、緊急時に専門家でなくても剥がしやすい方式の模索を行った。

阪神・淡路大震災被災史料の受入

 今年度は、神戸大学保管分の被災史料について、各所蔵者に対し寄贈寄託の意向調査を順次行うこととした。震災時にレスキューした神戸市東灘区藤本家文書(中性紙箱23箱分)と同市兵庫区樫原家資料(民具3点)の寄贈手続きを進め、その結果これらの資料群が史料ネットに寄贈されることとなった。

 

2. 市民や自治体との連携を重視した地域史研究や地域遺産保存・活用の取り組み

今年度は二つの市民講座と二つの若手企画シンポジウムを開催し、全時代に関わる歴史講座を開催することができた(詳細は右一覧表を参照)。

史料ネット主催市民講座

6月の市民講座では、『本庄村史』の執筆者である森岡秀人・大国正美両氏が、村史編纂事業によって明らかとなった村域の古代から近代史についての最新成果を報告し、幅広い年代層と広範囲からの参加者をえた。
また一昨年にひきつづき兵庫区と連携し、右記の講座を開催することができた。これまでクローズアップされることのなかった中近世移行期の兵庫津の空間構成や、兵庫津と織田・豊臣政権との関係の具体像にせまる報告の新規性と、神戸大学・関西学院大学能楽部による「敦盛」などの上演もあり、盛況裡に終わった。

若手企画シンポジウム

昨年度より、若手運営委員が自らでテーマ設定をする若手企画をシリーズ化している。今年は、「震災・記憶・史料~阪神・淡路大震災報道の歴史的検証」と「災害の記憶と伝承」の2つのシンポジウムを開催することができた。これらのシンポジウムの内容については、ブックレット化して出版する予定である。
また、神戸史学会との共同企画「地域史卒論報告会」も4回目を開催し、定着してきた。これは、大学院には進学せず一般企業などへ就職し、かつ主に兵庫県をフィールドとする地域史を卒論のテーマにした学生が市民の前で報告を行うという企画で、歴史系の大学で勉強した学生が、社会に出た後も地域遺産や史料を守る活動を続けるきっかけづくりとすることを目的としている。今回も、大学院進学者以外の卒業生の参加を得、『歴史と神戸』第272号誌上に第3回で報告した中村昌民氏の論文「戦時期自作農創設維持事業の可能性と限界」も掲載され、卒論での成果を社会に広く還元するという本企画の目的を達成することができた。

さらに、上記の催しに協力を行った。史料ネットでは、地元の要望に応える形で、講演者を紹介し、講演後は地域団体のメンバーとともに会の運営や地域での歴史資料・文化の保全についての意見交換の場を持ってきたが、今年は平野地区で「古文書を読む会」を新たに立ち上げることが出来、地域住民と古文書を通じた交流を深めつつある。

 

3.震災記録保存と文化財防災

今年度も引き続き、「大学コンソーシアムひょうご神戸」と協力しつつ、各大学を巡回する水損史料ワークショップを行うことにした。これは実際に史料を取り扱うことが多い歴史系の学科の学部生・院生や文化財担当職員を対象に、水損史料の乾燥法や史料ネット活動の周知をはかるために開催したものである。今回は神戸大・関西学院大・大手前大・神戸女子大・早稲田大・関西大の各大学、西宮市教育センター・深江会館で行うことができた。
また、敦賀短期大学の多仁照廣氏をお招きし、虫損史料のすきばめ研修も行った。

4.災害対策

2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震の被災地(栗原市栗駒文字地区)を、10月6日に訪問し、宮城資料ネットへのカンパ活動を行った。
また、行政機関とも協力し、水損史料の取扱に関する技術の習得や、アーキビストや司書への水損史料の処置方法に関する研修を行った。

5.組織と運営

今年度の事務局は、2名の事務局員にて業務を行った。運営委員会は第68回(2008年7月1日)から第79回(2009年5月21日)までの計12回を開催した。一部の学会を除き、運営委員の委員会への出席率もよく、若手委員が積極的に企画主催や被災史料整理に参加するなど、今年も若手委員の活躍が目立った年であった。

メールニュースの配信や、ブログによる情報提供を行い、ブログのアクセス数も開設当初より5000アクセスを超えるまでになった。ただし、今年度もホームページの更新が滞っているため、来年度に全面的に更新する予定である。また、ニュースレターは4回(2008年6月27日第54号、10月10日第55号、2009年1月30日第56号、5月29日第57号)発行した。
この1年間の書籍販売実績は、計56,002円(『神戸と平家』24冊、シンポ記録集2冊、総括集1冊、『平家と福原京の時代』2冊、『地域社会からみた「源平合戦」』9冊)の売り上げであった。5月30日段階の会員数は学会会員11団体、個人会員127名、学生・院生会員11名、サポーター55名、ニュースレター購読71名の計275名であった。昨年度より大幅に減少しているのは、会費の長期滞納に伴ういわゆる「幽霊会員」を除外したためである。

お問い合わせはお気軽に。 TEL 078-803-5565 受付時間 13:00~17:00(平日のみ)

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