記録と記憶をみらいへ

2006年の活動

1.被災史料の整理や被災地での調査活動

院生・学生・市民などのボランティアにより、事務局保管分の2004年台風23号水損史料の整理が進められた。神戸大学では計3回の整理が実施され、のベ23人が参加した。今年度は、出石町(現豊岡市)日野辺区有文書の整理作業をおこない、仮目録を作成した(約1000点)。なお、この整理作業に関して豊岡市から史料ネットに補助金が支給された。他には、乾燥済みの舞鶴市上東区有文書を返却することができた。その際に、巡回調査活動に協力をいただいた舞鶴地方史研究会(加藤晃会長)宛てに感謝状を贈呈した。
また、阪神・淡路大震災時に巡回調査した川西市西野家文書を、同市社会教育課と協カして川西市文化財資料館へ搬入した。
今年度から被災史料整理活動に際して有償ボランティア制度を試行的に導入した。

  • 第33回:2006年12月25日 参加者12名 (出石町日野辺区有文書仮整理)
  • 第34回:2007年2月4日 参加者5名 (同上)
  • 第35回:2007年3月19日 参加者6名 (同上)

2. 市民や自治体との連携を重視した地域史研究や地域遺産保存・活用の取り組み

主催事業:中世市民講座「兵庫区歴史講演会源平合戦―伝承された戦いの虚実」

  • 2007年2月24日(日)13時~16時@神戸市水道局たちばな研修センター多目的ホール 参加約200名
    • 講演:藤田明良氏(天理大学)「日本国王の港―日明貿易と兵庫津―」、主催=歴史資料ネットワーク・兵庫区民まちづくり会議・兵庫区役所

今年度も年4回の歴史講座を開催することができなかったが、昨年にひきつづき兵庫区と連携し、上記の講座を開催することができた。これまでクローズアップされることのなかった中世前期の兵庫津の具体像にせまる報告の新規性と、二胡演奏とのコラボレーションなどの新趣向もあり、参加者が定員の200名を越え盛況裡に終わった。なお、昨年度の中世市民議座の内容をふまえたブックレット『地域社会からみた「源平合戦」ー福原京と生田森・ーの谷合戦一』 (歴史資料ネットワーク編)が2007年5月末に岩田書院から刊行される予定となっている。

  • 主催事業:第2回「歴史系博物館と指定管理者制度」勉強会
    • 2006 年12 月17 日(日) 10時~14時半@明石市立文化博物館 参加12名
    • 報告:山下俊郎氏(明石市立文化博物館)、明尾圭造氏(芦屋市立美術博物館)
    • コメント:大村敬通氏(小野市立好古舘)、柿木央久氏(NPO法人芦屋ミュージアム・マネジメント)、佐々木和子(神戸大学文学部地域連携センター)
  • 主催事業:第2回「地域史卒論報告会」
    • 2007年3月18日(日)13時半~16時半@兵庫勤労市民センター 参加27名
    • 報告:熊野庸一氏(大阪大学4回生)「明治前期地方行財政の展開と町村連合会―兵庫県武庫郡生津村を例にー」、吉原大志氏(神戸大学4回生)「神戸・新開地における興行をめぐる問題の展開」、浅井七恵氏(大阪大学4回生)「米騒動における神戸新聞社焼き打ち事件の原因に関する考察」
    • 主催=歴史資料ネットワーク・神戸史学会

近年、文化財行政部門にも導入が急速に進んでいる指定管理者制度についての情報収集を行った。とりわけ、芦屋市立美術博物館の「直営」方式への移行や明石市立文化博物館に関する現状と課題について、両博物館と、芦屋市立美術博物館の受け皿となるNPO芦屋ミュージアム・マネジメントのメンバーを交えて勉強会を行った。
また、昨年度からの試みである、神戸史学会との共同企画「地域史卒論報告会」の2回目を開催することができた。これは、大学院には進学せず一般企業などへ就職し、かつ主に兵庫県をフィールドとする地域史を卒論のテーマにした学生が市民の前で報告を行うという企画で、歴史系の大学で勉強した学生が、社会に出た後も地域遺産や史料を守る活動を続けるきっかけづくりを目的としている。今回は、前回のように一部の大学にかたよることなく複数の大学からの参加と、大学院進学者以外の卒業生の参加を得て、本企画の目的を達成することができた。
さらに、下記の催しに協力を行った。

  • 後援:第8回「火垂るの墓を歩く会」
    • 2006年8月6日・8日 9時半~12時 主催=「火垂るの墓を歩く会」実行委員会

3. 震災記録保存と地域資料保存

2006年6月18日の総会に合わせて水損史料保全ワークショップ「よみがえれ水損史料~水害に備えて」を開催し、史料ネットが2004年度から本格的にスタートさせた水損史料の吸水乾燥法について実習をおこなった。
さらに今年度も「シンポジウム地域資料の保存と活用を考えるJ実行委員会に協力し、第8回から第10回までの準備研究会を共催した。
今年度から、各大学を巡回する水損史料ワークショップを行うことにした。これは実際に史料を取り扱うことが多い歴史系の学科の学部生・院生を対象に、水損史料の乾燥法や史料ネット活動の周知をはかるために開催したものである。今回は若手運営委員や所属研究室の協力をいただいた。2回とも多くの学生が参加し、おおむね好評であった。ワークショップに参加した学生が被災史料整理活動の手伝いに参加するなど、史料ネット活動の裾野を広げ、次世代へ継承する点においても効果がみられた。

  • 主催事業:水損史料保全ワークショップ「よみがえれ水損史料~水害に備えて」
    • 2006年6月18日(日) 14 時~17時 @西宮市大学交流センター 参加17名
    • 報告:松下正和(史料ネット事務局長) 「水損史料の処置方法について」
  • 主催事業:大学巡回水損史料ワークショップ
    • 2006年11月8日(水)18時半~ @大阪大学文学部棟2階 参加15名
      • 実演:松下正和・加藤宏文・浅利文子、協力:大阪大学文学部村田路人研究室
    • 2006年12月14日(木) 16 時半~ @大阪市立大学経済研究棟2階 参加12名
      • 実演:河野来失・加藤宏文、協力:大阪市立大学塚田孝研究室
  • 共催事業:第8回地域資料シンポ準備研究会
    • 2006年10月23日(月) 18時~20時半 @難波市民学習センター第二研修室
    • 報告:佐賀朝「地域演料シンポジウム実行委員会の活動について」、コメント:藤隆宏氏(和歌山県立文書館)
  • 共催事業:大阪歴科協11月例会「地域における歴史系博物館の役割―指定管理者制度の導入をめぐって」
    • 2006年11月4日(土) 13:30~17:00 @梅田東学習ルーム
    • 問題提起:八木滋氏(大阪歴科協、大阪歴史博物館)「歴史系博物館の現状と問題点―指定管理者制度導入を中心に」
    • コメント:大国正美(神戸深江生活文化史料館、史料ネット)「神戸・阪神地域での取り組みから考える」
    • 久留島浩氏(国立歴史民俗博物館)「歴史系博物館をめぐる日本の現状を考える」
  • 共催事業:第9回地域資料シンポ準備研究会
    • 2006年12月15日(金) 18時半~21時 @大阪市立弁天町市民学習センター
    • 報告:藤吉圭二氏(高野山大学)「デジタル技術を利用した歴史資料活用の試み―高野山大学を事例としてー」
  • 共催事業:第10回地域資料シンポ準備研究会
    • 2007年3月7日(水) 18時~20時半 @大阪市中央公会堂第6会議室
    • 報告:小林隆氏(彦根市史編さん室)「滋賀県における公文書の保存・活用に向けた取り組みその現状と課題一」
    • 共催:京都滋賀における歴史資料保存研究会(京都民科歴史部会サブG)・桃山学院大学地域資料研究会

 

4. 災害対策

2007年3月に発生した能登半島地震への対策のために、災害発生直後より情報収集にあたるとともに、主に石川県の被災地の文化財関係機関・報道機関に対して被災資料の現状確認・保全依頼のFAXを行った。4月に発足した現地組織である「能登歴史資料保全ネットワーク」に支援を申し出た。
また、各地のネットワークや行政機関とも協力し、水損史料の取扱に関する技術の習得や、アーキビストや司書への水損史料の処置方法に関する研修を行った。今年度も各地で大規模災害に遭う前に史料保全のネットワーク化をはかる動きがひきつづき多く見られたのが特徴的であった。福島では「ふくしま文化遺産保存ネットワーク」が、高知では土佐山内家宝物資料館が「歴史資料保存相談窓口」(略称資料保存119番)が開設し、山形では「山形文化遺産防災ネットワーク」の設立に向けて準備がはじまった。史料ネットではこれらの「予防ネット」とも連絡を密に取り合い、シンポジウムなどで提言を行った。

  • 参加:第1回人と文化遺産保存継承ミーティング・文化財防災サミットIN山形
    • 2006年10月20日(金) @東北芸術工科大学
    • 報告:松下正和「歴史資料ネットワークの地域遺産保全活動」他
    • 2006年10月21日(土)  @同上
    • 報告:奥村弘「大規模自然災害と地域歴史遺産保全~阪神淡路大震災から現在までの歩み」他
    • 主催:東北芸術工科大学文化財保存修復研究センター
  • 参加:平成18年度滋賀県図書館員専門講座(後期)
    • 2007年1月26日(金) 14時45分~16時15分@滋賀県立図書館
    • 報告:松下正和「地減資料の保存と利用の現場から」
  • 参加:第3回「文化財の防災計画に関する研究会 震災から美術工芸品をまもる」
    • 2007年1月29日(月) @東京文化財研究所
    • 報告:奥村弘
    • 主催=東京文化財研究所修復技術部
  • 参加:第2回人と文化遺産保存継承ミーティング
    • テーマ:「災害直後と継続的な救済活動および災害前の活動の実際を知る」
    • 2007年3月9日(金)・10日(土) @東北芸術工科大学
    • 参加:松下正和・河野未央
  • 参加:第14回近畿府県公文書館等実務担当者研究会
    • 2007年3月16日(金)15時~17時
    • 実演:松下正和「水損資料の処置方法について」 @京都府立総合資料館

5. 組織と運営

今年度の事務局は、5名の事務局員にて業務を行った。運営委員会は第46回(7月10日) から第55回(5月15日)までの計10回を開催した。
今年度の運営委員会は委員の出席率もよく、とりわけ若手委員の活躍が目立った年であり、昨年度の改善の要望が反映されたものとなった。

2006年度運営委員・事務局・会計監査委員一覧

〈運営委員会〉

浅利文子(日本史研究会)・大国正美(神戸史学会)・奥村弘(神戸大学史学研究会)・加藤宏文(個人会員からの選出)・佐賀朝(大阪歴史科学協議会)・立野康志郎(大阪歴史科学協議会)・中西威晴(大阪歴史科学協議会)・中野賢治(大阪歴史学会)・藤田明良(個人会員からの選出)・松下正和(京都民科歴史部会)・吉村真樹子(大阪歴史学会)

〈事務局〉

奥村弘(代表)・藤田明良(副代表)・松下正和(事務局長)・人見佐知子(事務局員)・河野未央(事務局員)・堀田昌宏(事務局員)・浅利文子(事務局員)・板垣貴志(事務局員)

〈会計監査委員〉山田修士・添田仁

今年度はホームページの更新が滞った。ニュースレターは4回(2006年8月4日第46号、2006年12月1日第47号、2007年3月1S第48号、2007年5月1日第49号)発行した。
この1年間の書籍販売実績は、計89311円(『神戸と平家』41冊、シンポ記録集4冊、『平家と福原京の時代』15冊)の売り上げであった。4月30日段階の会員数は学会会員11団体、個人会員145名(昨年比+5)、学生・院生会員17名(同比-4)、サポーター55名(同比-1)、ニュースレター購読82名(同比+1)の計310名(同比+1)であった。
また、各学会の会誌上や例会、各地史料ネットの出版物などにおいて、史料ネットの活動紹介やカンパ呼びかけの協力を賜った。詳細は下記の通りである。

各学会会員・各地史料ネットの協力

  • 河野未央「水害からの資料保全活動について―2004年の台風23号被害を中心に―」(矢田俊文編『新潟県中越地震と文化財・歴史資料―1年間のとりくみ―』新潟大学人文学部地域文化連携センタ一、2006年3月)
  • 松下正和「2004年台風23号による水損歴史資料の保全・修復活動について」他(敦賀短期大学地域交流センター編『史料の被災と救済・保存~福井史料ネットワーク活動記録』同発行、2006年11月)
  • 河野未央「歴史資料ネットワークの取り組み」(文化財保存修復学会編『私たちの文化財を救え!!』クパプロ、2007年1月)

 

お問い合わせはお気軽に。 TEL 078-803-5565 受付時間 13:00~17:00(平日のみ)

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