記録と記憶をみらいへ

2017年の活動

1. 被災史料の整理や被災地での調査活動

阪神・淡路大震災や2004年台風23号時の保全史料などのうち、事務局保管の未整理分について整理作業を進めるという活動方針に基づき、以下の整理作業を行った。

〔2004年台風23号に伴う文書整理とクリーニング作業〕

2004年台風23号によって被災した田尻一雄家文書(兵庫県豊岡市)は現在、所蔵者からの寄贈をうけ、史料ネットが保管している(段ボール10箱)。乾燥作業は完了しているものの、固着展開や、汚れ・臭いの除去が課題として残っていた。今年度も、絵画修復専門家の谷村博美氏の指導のもと、「被災文化財修復ワークショップひぶわ」と協力し、大阪芸術大学短期大学部伊丹学舎にてクリーニング作業を行った。今後も継続して処置を続ける必要がある。

〔東日本大震災被災資料クリーニング作業〕

2011年5月6日に岩手県大船渡市の紙本・書籍保存修復家の金野聡子氏および京都造形芸術大学の大林賢太郎氏らによって救出された、大船渡市赤崎町S家の資料群について、津波被災した近現代史料の一部(衣装ケース約4箱分)を宮城資料ネットより受け入れ、2016年3月より月2回のペースでボランティアによるクリーニング作業を行ってきた。2016年12月にこの作業は完了し、現在は写真撮影作業に移行している。今年度は第23回から第32回まで計10回開催した。
また、2018年2月10日に東北大学で開催されたシンポジウム「歴史が導く災害科学の新展開」において、小野塚航一(運営委員)が、上記資料群の内容を紹介する報告を行った。

2. 市民や自治体との連携を重視した地域史研究や地域遺産保存・活用の取り組み

今年度は、総会後のシンポジウムのほか、地域史卒論報告会などを開催した。

〔史料ネット主催・共催シンポジウム・講演会〕

2017年7月9日のシンポジウム「被災資料整理ボランティアのあり方を考える」では、永野弘明(史料ネット)より熊本地震で被災した歴史資料の保全活動の現状について報告した。髙橋由美子氏(十日町市教育委員会)は、十日町市古文書整理ボランティアの10年の歴史を振り返りながら、市民参加による資料整理のあり方を報告した。小野塚航一(史料ネット)は、大船渡被災資料整理ボランティアの作業をめぐって、ボランティア作業の続け方の課題と可能性を整理した。河野未央・城戸八千代両氏(尼崎市立地域研究史料館)の報告では、尼崎市立地域研究史料館のボランティア作業をもとに、市民主体となった活動の継続の方法について報告した。それぞれ、多様なボランティア活動の実践を具体的に述べる報告であったことから、資料整理ボランティアを続けることの意味について深めることができた。また、今年度もインターネット中継を行った。

〔「シンポジウム地域資料の保存と活用を考える」実行委員会への参加〕

今年度は特段の活動はなかった。

〔地域史卒論報告会〕

神戸史学会との共同企画「地域史卒論報告会」は13回目を開催した。これは、大学院には進学せず一般企業などへ就職し、かつ主に兵庫県を中心とした阪神地域をフィールドとする地域史を卒論のテーマにした学生が市民の前で報告を行うという企画で、歴史系の大学で勉強した学生が、社会に出た後も地域遺産や史料を守る活動を続けるきっかけづくりとすることを目的としている。今回は、報告数が例年よりも多かったため、午前中からの開催とした。近年で最多の参加者数を得ることができ、卒論での成果を社会に広く還元するという本企画の目的を達成することができた。また、近世地域史研究会などの市民による自主サークルの参加もあり、関係する団体への広報の効果もあった。加えてプロジェクターによる画像の投影といった新たな取り組みもできた。

〔第4回全国史料ネット研究交流集会〕

「第4回全国史料ネット研究交流集会」を開催した。今回はノートルダム清心女子大学(岡山市)を会場に、実行委員会および国立文化財機構を主催に実施した。本集会にあたって当会は、岡山史料ネットとともに実行委員会を組織し、後援団体として名を連ねた。集会では2日間にわたって、久留島浩氏、久保田裕道氏による講演のほか、全国各地で被災史料保全活動に取り組む13団体からの口頭報告、14団体からのポスター発表が行われ、当会からは東野将伸(運営委員)がポスター発表を行った。岡山県内を中心に、多くの参加者による意見交換を通じて、各地の活動に関する情報共有と、団体間の交流を深めることができた。

〔芦屋市親王寺の屏風解体調査〕

2016年10月から史料ネット運営委員の河野未央を中心に、芦屋古文書に親しむ会のメンバーなど、市民ボランティア有志とともに芦屋市親王寺が所蔵する古文書や古典籍の調査を行ってきた。2017年6月からは史料ネットが窓口となってボランティアを募集し、同寺が所蔵する屏風の解体および下張り文書はがし作業を実施している。今年度は、2017年9月26日、10月24日、11月14日、12月19日、2018年1月16・30日、2月12・13日、3月13・27日の計10回で、のべ約80名が参加した。これで親王寺の所蔵する屏風の解体調査をすべて終えることができた。

主催◎、共催○、後援●、参加・協力△

◎シンポジウム「被災資料整理ボランティアのあり方を考える」
2017年7月9日(日)@神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ
特別報告:永野弘明(史料ネット)「熊本地震被災歴史資料保全活動の現状について」、報告:髙橋由美子(十日町市教育委員会)「市民参加による資料整理 -十日町市古文書整理ボランティア10年のあゆみ-」、小野塚航一(史料ネット)「大船渡被災資料整理作業に携わって考えたこと」、河野未央・城戸八千代(尼崎市立地域研究史料館)「ボランティアとの協働-尼崎市立地域研究史料館の実践について-」
参加者:52名 インターネット配信視聴者数:約10名

△第19回 火垂るの墓を歩く会
【御影コース】
2017年8月1日(火)、5日(土)
阪神石屋川駅南側公園集合 → 石屋川公園 → 御影公会堂 → 成徳小学校 → JR六甲道駅 参加者:約80名
〔オプショナルツアー〕阪急夙川駅 → 香枦園浜・回生病院
【西宮コース】
2017年8月8日(火)、11日(金・祝)
阪急苦楽園口駅改札口集合 → ニテコ池 → 阪急夙川駅 参加者:約110名
主催=「火垂るの墓を歩く会」実行委員会
協力=神戸空襲を記録する会、歴史資料ネットワーク

●第4回全国史料ネット研究交流集会
2018年1月20日(土)/ 1月21日(日)@ ノートルダム清心女子大学
基調講演:久留島浩(国立歴史民俗博物館館長/千葉歴史・自然資料救済ネットワーク共同代表)「地域社会の歴史・文化・自然資源を自分たちのものに」、久保田裕道(東京文化財研究所無形民俗文化財研究室長)「無形文化遺産の災害復興と防災」
1日目の報告:富岡直人(岡山史料ネット)「岡山からの陸前高田市立博物館被災剥製・動物遺存体標本救出」、西向宏介(広島県立文書館)「広島県における史料保全活動のあり方と今後について」、高嶋賢二(愛媛資料ネット)「町見郷土館×佐田岬みつけ隊×愛媛資料ネット」、藤谷彰(三重県歴史的・文化的資産保存活用連携ネットワーク)、「『みえ歴史ネット』の所在確認調査・現況確認調査の取組」、関本明子(倉吉博物館)「鳥取県中部地震での活動について」、三澤純(熊本被災史料レスキューネットワーク)「『熊本モデル』の成果と課題」
2日目の報告:高橋陽一(NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク)「地域と歩む歴史学―上廣歴史資料学研究部門の活動―」、柳沼賢治(ふくしま歴史資料保存ネットワーク)「福島県における東日本大震災関連資料収集の現状と課題」、中村元(新潟歴史資料救済ネットワーク)「新潟歴史資料救済ネットワークの活動について」、武子裕美(NPO法人歴史資料継承機構じゃんぴん)「見よう 知ろう 発信しよう!―じゃんぴんの広報活動―」、福嶋紀子(長野被災建物・史料救援ネットワーク)「神城断層地震、レスキューのその後」、白水智(地域史料保全有志の会)「『こらっせ』が日常になって」、森元純一(岡山史料ネット)「和気町における大國家文書調査の取組について」
<ポスター報告団体・報告者>
茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク(作間亮哉氏)、岩手歴史民俗ネットワーク(八木光則)、NPO法人歴史資料継承機構じゃんぴん(武子裕美)、香川県立ミュージアム(御厨義道)、鹿児島歴史資料防災ネットワーク(準備会)(矢野真帆)、神奈川地域資料保全ネットワーク(宇野淳子)、千葉歴史・自然資料救済ネットワーク(藤野紗江)、広島県立文書館(西向宏介)、ふくしま歴史資料保存ネットワーク(柳沼賢治)、宮崎歴史資料ネットワーク(籾木郁朗)、山形文化遺産防災ネットワーク(小林貴宏)、歴史資料ネットワーク(東野将伸)、歴史資料保全ネットワーク・徳島(町田哲)、歴史資料保存ネット・わかやま(橋本唯子)
主催:第4回全国史料ネット研究交流集会実行委員会(岡山史料ネット、歴史資料ネットワーク)独立行政法人国立文化財機構
共催:人間文化研究機構(国立歴史民俗博物館)、科学研究費補助金基盤研究(S)「災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立―東日本大震災を踏まえて―」(研究代表者:奥村弘)研究グループ
後援:茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク、岩手歴史民俗ネットワーク、NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク、NPO法人歴史資料継承機構じゃんぴん、愛媛資料ネット、岡山史料ネット、鹿児島歴史資料防災ネットワーク(準備会)、熊本被災史料レスキューネットワーク、山陰歴史資料ネットワーク、地域史料保全有志の会、千葉歴史・自然資料救済ネットワーク、長野被災建物・史料救援ネットワーク、新潟歴史資料救済ネットワーク、ふくしま歴史資料保存ネットワーク、三重県歴史的・文化的資産保存活用連携ネットワーク、宮崎歴史資料ネットワーク、山形文化遺産防災ネットワーク、歴史資料ネットワーク、歴史資料保全ネットワーク・徳島、歴史資料保全ネット・わかやま、岡山近代史研究会、岡山県図書館協会、岡山地方史研究会、岡山民俗学会、考古学研究会
参加者:約150名

◎兵庫区歴史講演会「歴史のなかの兵庫津―清盛生誕900年、神戸開港150年―」
2018年2月24日(土)@兵庫公会堂
講演:奥村弘(神戸大学教授)「近代神戸の都市イメージの中の兵庫」、髙橋昌明(神戸大学名誉教授)「清盛の中国交易と築島築港」
主催:兵庫区民まちづくり会議、歴史資料ネットワーク、兵庫区役所
協力:ひょうご観光ボランティア
参加者:約200名

◎第13回 地域史卒論報告会
2018年3月18日(日)@六甲道勤労市民センター
報告:清水彩花(大阪市立大学)「日記から見る近世中期の大坂天満宮と周辺社会」、澤居美奈実(大阪大学)「文久期御親兵制度と幕府・公卿・諸藩」、吉免涼太(大阪教育大学)「神戸と造船所―「軍隊と地域」の視点から―」、小谷真子(大阪市立大学)「戦後大阪における進駐軍用娯楽・慰安施設と地域社会」
主催:神戸史学会、歴史資料ネットワーク
参加者:45名

◎史料の応急処置ワークショップ
2018年3月24日(土)@神戸大文学部
講師:尾立和則
参加者:10名

3. 震災記録保存と文化財防災

〔文化財保護法改定をめぐる動向へのパブリックコメント及び声明への賛同〕

2017年8月31日、文化庁文化審議会文化財分科会企画調査会が、「中間まとめ」を発表した。そのなかでは、地域社会の現状と文化財の継承、およびその担い手を不可分のものとして捉え、特に未指定文化財にも言及する視点を取り入れるなど、文化財の保存と活用について重要な点を含むものであった。ただし、当会の活動ともかかわる災害時や平時における歴史資料の保全・活用に関しては、より具体的に検討すべき点が少なくないことから、文化庁が募集したパブリックコメントに対して、9月27日付けで意見提出を行った。また、日本歴史学協会は10月6日付けで26学協会との連名で「文化財保護法の改定に対し、より慎重な議論を求める声明」を発表したことをうけ、当会も関係学会の意向確認を行ったうえで、同声明へ賛同した。これらの動きについては、『史料ネット News Letter』86号に特集記事を掲載した。
なお、2018年第196回国会(通常国会)において、文化財保護法を改正する法律が成立し、2019年4月1日より施行されることとなった。今回の改正が資料保全活動の現場にどのような影響を与えるかについて、今後の動向を注視する必要がある。

〔水損史料修復ワークショップと学会等での報告〕

今年度も引き続き、水損史料修復ワークショップと学会等での報告を下記の通り行った。
今年度は、運営委員や事務局員が全国各地で精力的にワークショップを行ったほか、資料保全に関わる学会等での報告も多数行い、史料ネットのこれまでの活動蓄積を積極的に発信し、各地史資料ネットや学会との共有に努めた。

〔阪神・淡路大震災資料の保存・活用に関する研究会(被災地図書館との震災資料の収集・公開に係る情報交換会)〕

2017年1月23日に神戸大学社会科学系図書館で開催された「第17回阪神・淡路大震災の保存・活用に関する研究会」に参加した。なお同研究会は、2011年度より東日本大震災被災地の大学・図書館と阪神・淡路大震災に関する資料保存機関を結ぶ「被災地図書館との震災資料の収集・保存に係る情報交換会」と共同開催している。今年度の研究会では、熊本地震の発生を受けて震災資料の保存の取り組みを行っている「くまもと森都心プラザ図書館」からの報告のほか、南相馬市立中央図書館、神戸都市問題研究所、神戸大学附属図書館震災文庫からの震災資料の収集・保存に関する報告がなされた。また意見交換の場では、参加各館より震災資料の収集・保存に関する現状と課題が紹介されると共に、資料の保存方法や活用について、活発な議論が交わされた。また会前日の22日には、関連企画としてフィールドワーク「阪神・淡路大震災のまち・歴史まちあるき」が行われ、震災を歴史の中で捉え直し、次世代に継承していくことを企図したフィールドワークが実施された。

参加・協力
奥村 弘「地域歴史遺産的可能性:地域歴史学興地域歴史資料的守護」、フォーラム 負の歴史遺産・現在の歴史意識と博物館。於国立台湾歴史博物館、2017年7月14日~16日
奥村 弘「地域の記憶継承と街づくり-震災資料保存活用から考える-」、第25回土木学会地球環境シンポジウム 未来世紀都市創出~地球環境とエネルギーそして防災~、於神戸大学工学部LR棟 LR501、2017年9月6日
奥村 弘「地域歴史遺産としての歴史資料-阪神・淡路大震災後22年の被災歴史資料保存の歩みから考える-」、第11回資料保存シンポジウム 原資料保存とデジタルアーカイブその未来-さまざまな取り組みの中から-、於一橋大学一橋講堂 中会議場、2017年10月10日
奥村 弘「要点整理」、国際シンポジウム 災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立をめざして、於神戸大学先端融合研究環統合拠点コンベンションホール、2017年11月11日・12日
奥村 弘「阪神・淡路大震災から現在に至るまでの文化財防災体制の全国的動向」、兵庫県文化遺産防災研修会in播磨西、於日本城郭センター2階大会議室、2017年11月28日
奥村 弘「災害に強い文化と地域歴史遺産継承のための大学間ネットワークとその国際的展開」、神戸大学震災復興支援・災害科学研究推進室 第6回シンポジウム 学術的知見を活かして大規模災害に備える-緊急支援・災害後の暮らし-、於神戸大学百年記念館六甲ホール、2017年12月1日
奥村 弘「『新三木市史』と歴史を活かしたまちづくり」、みき歴史資料館企画展特別講演会、於三木市立みき歴史資料館3階講座室、2017年12月10日
奥村 弘「コメント」、東北大学災害科学国際研究所シンポジウム 歴史が導く災害科学の新展開、於東北大学災害科学国際研究所1階多目的ホール、2018年2月10日
奥村 弘「テーマ:震災の記録の利活用について」、国立国会図書館東日本大震災アーカイブに関する意見聴取会、於国立国会図書館東京本館新館3階研修室、2018年2月19日
小野塚航一「大船渡被災史料の紹介とその可能性」、東北大学災害科学国際研究所シンポジウム 歴史が導く災害科学の新展開、於東北大学災害科学国際研究所1階多目的ホール、2018年2月10日
加藤明恵「災害から地域資料を守る-歴史資料ネットワークの活動から-」、まちづくり地域歴史遺産活用講座、於神戸大学文学部、2017年10月15日 参加者:約20名
川内淳史・松岡弘之・吉原大志「災害とアーカイブ」、アーカイブズサミット2017 in 京都、於京都府立京都学・歴採館、2017年9月9日
永野弘明・吉原大志「災害から地域歴史資料を守る」、愛媛県博物館協会研修会、於愛媛県総合科学博物館、2018年2月28日 参加者:約30名
吉原大志「被災地での資料保存の取り組み」、第26回京都図書館大会、2017年8月7日(台風5号の影響により中止。同大会ホームページにレジュメのみ掲載)
松下正和「ふるさとの地名が語る印南郡の古代史―播磨国風土記を中心に-」、平成29年度高砂市高齢者大学、於教育センター、2017年7月12日
松下正和「γ線殺菌の実用化に向けて-修復学会での報告、質疑応答をふまえて」、文化財カビ研究会(基盤研究(S)災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立-東日本大震災を踏まえて)、於梅田インテリジェンスラボラトリー、2017年7月24日
松下正和「水損紙製資料の劣化抑制に関する研究」、東北大学災害科学国際研究所 平成28年度共同研究成果報告会、於東北大学青葉山新キャンパス災害科学国際研究所、2017年7月29日
松下正和「被災史料保全活動論」、平成29年度長期アーカイブズ・カレッジ〔科目6〕アーカイブズ管理研究Ⅳ保存管理、於国文学研究資料館、2017年9月8日
松下正和「大規模自然災害から博物館資料を守る」、平成28年度大阪大学博物館実習講義・ワークショップ、於大阪大学総合学術博物館、2017年9月14日
松下正和「文化財の救出-水濡れ歴史資料を救う方法-、いなみ野学園大学院講座、於いなみ野学園、2017年10月3日
松下正和「津波の記憶を伝える先人たちの工夫~~白浜町富田の津波警告板を例に」、白浜町現地学習会(基盤研究(C)近世南海地震記録の現代語訳化)、於富田会館、2017年10月28日
松下正和「兵庫県佐用町における浸水シミュレーションの文化財防災への活用と課題」、第12回地域歴史資料学研究会(日伊の文化財情報システムに関する研究会)、於神戸大学、2017年11月13日
松下正和「地域に残された災害資料を活用した自主防災活動-災害の記録と記憶の継承事例-」、第277回神戸大学RCUSSオープンゼミナール、於神戸市役所危機管理センター、2017年11月18日
松下正和「地域社会の課題に向き合う-歴史学の立場から、地域を豊かにする相互扶助が生まれるビジネスとは、於神戸大学百年記念館六甲ホール、2017年11月19日
松下正和「氷上郡の古代史-青垣町を中心に」、氷上郷土史研究会、於青垣住民センター、2017年11月26日
松下正和「水損史料の吸水乾燥法について」、兵庫県文化遺産防災研修会in播磨西、於日本城郭研究センター、2017年11月28日
松下正和「大規模自然災害から博物館資料・民間所在資料を守る」、平成29年度岐阜大学博物館資料論・WS、於岐阜大学教育学部、2017年12月6日
松下正和「水損史料の吸水乾燥法について」、於関西大学、2017年12月13日
松下正和「播磨の災害史(1)-古代・中世の山崎断層系地震」、於姫路市立生涯学習大学校、2017年12月22日
松下正和「播磨の災害史(2)-播磨地域をも襲った南海地震」、於姫路市立生涯学習大学校、2018年1月12日
松下正和「播磨の災害史(3)-荒ぶる女神と洪水伝承」、於姫路市立生涯学習大学校、2018年1月26日
松下正和「古文書に親しむ」、とよおか市民学芸員講座、於豊岡市立但馬国府・国分寺館、2018年1月31日
松下正和「松森天満神社の縁起~天満宮御一代記と絵解き~」、松森自治会文書・松森天満神社文書調査発表会(基盤研究(C)自治会保管文書の恒久的保全・活用体制構築に関する研究)、於松森公民館、2018年2月10日
松下正和「水損資料応急処置ワークショップ~「史料の救命士」ボランティアへのお誘い」、和博連研修会、於新宮市福祉センター、2018年2月15日
松下正和「誰にでもできる水濡れ資料の応急処置」、歴史から学ぶ防災2017、於北山村村民会館、2018年2月25日
松下正和「古記録に見る芦屋とその近辺の災害」、芦屋古文書に親しむ会、於芦屋市立あしや市民活動センターリード芦屋、2018年3月26日
松下正和「歴史文化を活かしたまちづくり-住民主体の地域調べ活動」、平成30年度兵庫県いなみ野学園大学院講座、於いなみ野学園、2018年4月27日
松下正和「水損歴史資料の総合的保全システムの構築に向けて」、二水会、於神戸大学都市安全研究センター会議室、2018年5月9日
松下正和、平成30年度とよおか市民学芸員養成講座、於豊岡市立豊岡歴史博物館但馬国府・国分寺館、2018年5月17日
松下正和「円通寺襖下張り文書はがしの作業方法と文書からわかったこと」、氷上郷土史研究会、於円通寺、2018年5月18日
松下正和「歴史資料ネットワークによる新たな災害対応-水損史料保全活動の取組-」、岐阜県博物館協会H30 年度県民文化講演会「私が救う想いの記録」、於ハートフルスクエアーG、2018年5月25日
松下正和ほか「洪水被災古文書の臭気成分に関する研究」、「水損資料の災害種別・処置法別の揮発成分特性について」、第40回文化財保存修復学会、2018年6月16日、於高知市文化プラザかるぽーと
松下正和「古文書に親しむ」、加古川流域の古文書を読む会、於いなみ野学園、2018年5月28日・6月25日
松下正和「浦手形にみる海難・風水害」、神戸史談会6月例会、於和田神社、2018年6月24日
松下正和「海陽町の津波記念碑について」、海陽町歴史カフェ(基盤研究(C)近世南海地震記録の現代語訳化)、於阿波海南文化村、2018年7月7日

4. 災害対策

〔東日本大震災・長野県北部地震〕

2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)とそれに伴う津波災害、およびその翌日に発生した長野県北部地震により、東日本地域は甚大な被害に見舞われた。史料ネットでは震災発生直後より被災地の史資料ネットの活動の立ち上がりを支援するとともに、被災地後方より活動のバックアップを行った。また2011年4月に文化庁の提起によって結成された被災文化財等救援委員会(2013年3月解散)の構成団体として参加し、同委員会による文化財レスキュー事業の一翼を担った。2014年7月には、旧救援委員会の枠組みを引き継ぐ形で、独立行政法人国立文化財機構によって「文化財防災ネットワーク推進事業」が開始され、史料ネットも当事業による文化遺産防災ネットワーク推進会議の参画団体となった。
震災発生より7年が経過したが、被災地で活動する各史資料ネットでは、現在でもレスキュー資料の整理およびクリーニング作業が継続して行われている(なお、当会が進めている大船渡市赤崎町S家の資料群の整理作業についてはp3を参照されたい)。これら各地の史資料ネットと情報の共有をはかりつつ、必要な支援を継続して行っているところである。

〔2016年熊本地震〕

2016年4月14日以来、最大震度7を記録する2回の大きな地震のほか、これまでにない頻度での余震が継続的に発生した。同月23日には熊本大学文学部附属永青文庫研究センターに事務局を置く、県内の大学関係者や学芸員らによる「熊本被災史料レスキューネットワーク(熊本史料ネット)」が立ち上げられ、被災地での被災資料救済保全活動を開始した。当会は現地関係者との連絡を通じて情報を集めるとともに、熊本史料ネットの活動資金のカンパ受け入れを代行してきた。震災発生から2年が経過し、熊本史料ネットの活動も本格化するなか、当初の目的であった神戸からの活動支援の段階から、現地での継続的な活動の展開という段階へ移ったと判断し、熊本史料ネットと相談した結果、2018年4月から支援募金の窓口を熊本史料ネットへ一元化した。

〔2017年7月5日からの大雨による水害〕

2017年7月5日からの大雨により、各地で災害が発生したことをうけ、福岡県朝倉市・東峰村・添田町、大分県中津市・日田市それぞれの文化財担当部局へ、依頼文書「大雨等によって被災した歴史資料・文化遺産の保全についてのお願い」を7月13日付けでFAX送信した。また、当会ホームページ上に呼びかけ文「2017年7月5日からの大雨による被災地のみなさま、ならびに災害ボランティアのみなさまへ(歴史資料保全のお願い)」を7月16日付けで掲載した。その後、福岡県教育庁文化財保護課より、被災地との連絡窓口は同課が担当することと、支援が必要な際には連絡する旨についての文書がFAXで届き、同様の趣旨の電話連絡があった。

5. 組織と運営

今年度の運営委員会は第179回(2017年7月9日)から第189回(2018年6月6日)までの計11回を開催した。運営委員の委員会への出席率もよく、活発に意見を交わした。

2017年度 運営委員・事務局・会計監査委員一覧(五十音順) ※イタリック表記は事務局員兼任
<運営委員>大国正美(神戸史学会)・奥村弘(神戸大学史学研究会)・小野塚航一(大阪歴史科学協議会)・加藤明恵(個人会員から選出)・川内淳史(個人会員からの選出)・河野未央(個人会員からの選出)・佐賀朝(大阪歴史科学協議会)・仲田侑加(日本史研究会)・永野弘明(大阪歴史科学協議会)・東野将伸(大阪歴史学会)・藤田明良(個人会員からの選出)・前田結城(個人委員から選出)・松岡弘之(大阪歴史科学協議会)・松下正和(個人会員からの選出)・吉川圭太(個人会員からの選出)・吉原大志(個人会員から選出)
<事務局>浅利文子(事務局員)・跡部史浩(事務局員)・奥村弘(代表)・川内淳史(副代表)・小野塚航一(事務局員)・加藤明恵(事務局員)・藤田明良(副代表)・松岡弘之(事務局)・松下正和(副代表)・吉川圭太(事務局員)・吉原大志(事務局長)
<会計監査委員>長町顕・久野洋

従来のメールニュースの配信に加え、2012年7月1日に開設したホームページを中心に情報提供を行った。引き続き、ブログを中心とした情報提供を行い、2017年7月10日から2018年6月5日までの訪問数は18804、ページビューは34494であった。またtwitterアカウント(@siryo_net)を通じたリアルタイムの情報発信や、facebookページの活用も進めている。ニュースレターは、3回(2018年2月15日第86号、2018年5月29日第87号、2018年6月15日第88号)発行した。なお、過去に発行したニュースレター(第1号~第70号)のPDF化データは、神戸大学附属図書館震災文庫のホームページ上で公開している。
2018年6月1日現在の会員数は学会会員8団体、個人会員156名(昨年比4減)、学生会員10名(同比1増)、サポーター46名(同比2減)、ニュースレター購読60名(増減無)の計280名(同比5減)である(2017年度いっぱいでの退会予定者は差し引き済)。
なお、史料保全活動に関わるボランティア登録数は、2018年6月6日現在113名である。

6.出版および論文などの掲載

史料ネット委員による論文などの掲載は下記の通りである。

小野塚航一「書評 白水智著『古文書はいかに歴史を描くのか : フィールドワークがつなぐ過去と未来』」(『Link:地域・大学・文化』9、2017年12月)
河野未央「尼崎市立地域研究史料館の実践-ボランティアとの協働-」(城戸八千代氏との共著、『記録と史料』第28号、2018年3月)
河野未央「尼崎市立地域研究史料館でのボランティア作業」(城戸八千代氏との共著、『ヒストリア』第267号、2018年4月)
永野弘明・吉原大志「研修会報告 災害から地域歴史資料を守る」(愛媛県博物館協会会報『愛媛の博物館』55号、2018年)
東野将伸「報告 第四回全国史料ネット研究交流集会」(『ヒストリア』267号、2018年4月)
松下正和「古代の請戸」(『大字誌ふるさと請戸』蕃山房、2018年4月)

通常会計 2017年度決算(2017年6月16日~2018年6月15日)

災害会計 2017度決算(2017年6月16日~2018年6月15日)

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