記録と記憶をみらいへ

2016年の活動

1 被災史料の整理や被災地での調査活動

阪神・淡路大震災や2004年台風23号時の保全史料などのうち、事務局保管の未整理分について整理作業を進めるという活動方針に基づき、以下の整理作業を行った。

〔2004年台風23号に伴う文書整理とクリーニング作業〕

2004年台風23号によって被災した田尻一雄家文書(兵庫県豊岡市)は現在、所蔵者からの寄贈をうけ、史料ネットが保管している(段ボール10箱)。乾燥作業は完了しているものの、固着展開や、汚れ・臭いの除去が課題として残っていた。今年度も、絵画修復専門家の谷村博美氏の指導のもと、「被災文化財修復ワークショップひぶわ」と協力し、大阪芸術大学短期大学部伊丹学舎にてクリーニング作業を行った。今後も継続して処置を続ける必要がある。

〔東日本大震災被災資料クリーニング作業〕

2011年5月6日に岩手県大船渡市の紙本・書籍保存修復家の金野聡子氏および京都造形芸術大学の大林賢太郎氏らによって救出された、大船渡市赤崎町S家の資料群について、津波被災した近現代史料の一部(衣装ケース約4箱分)を宮城資料ネットより受け入れ、2016年3月より月2回のペースでボランティアによるクリーニング作業を行ってきた。2016年12月にこの作業は完了し、現在は写真撮影作業に移行している。今後も写真撮影作業を継続するとともに、京都造形大で処理中の資料をあわせ、ボランティアによる目録作成も実施していく予定である。
なお、2017年3月4日には大船渡市においてシンポジウム「歴史をつなぐ、人をつなぐ―旧気仙郡における被災史料保全活動―」を開催し、神戸大学での作業経過と課題および被災史料からみえてきた近代大船渡の歴史について報告した。

2 市民や自治体との連携を重視した地域史研究や地域遺産保存・活用の取り組み

今年度は、総会後のシンポジウムのほか、地域史卒論報告会などを開催した。

〔史料ネット主催・共催シンポジウム・講演会〕

2016年7月3日のシンポジウム「資料保全と活用の長い道のり―熊本地震によせて―」では、永野弘明より熊本地震による被害状況についての緊急報告を行った。白水智氏(地域史料保全有志の会)は、2011年長野県北部地震以後の栄村での取り組みの現在について報告した。小林貴宏氏(山形文化遺産防災ネットワーク)は、山形ネットの取り組みのあゆみを振り返りながら、今後の展望と課題を整理した。藤木透氏(佐用町教育委員会)は、2009年台風9号豪雨水害後の活動と、現在の日常的な活動について報告した。菊地芳朗氏(ふくしま歴史資料保存ネットワーク)は、ふくしま史料ネットの活動を振り返りながら、現在計画されている震災ミュージアム構想の現状と問題点について指摘した。いずれの報告も、それぞれの現場に即しながらも、熊本地震被災地での保全活動につながる論点を提起したもので、活発に議論がなされた。

〔「シンポジウム地域資料の保存と活用を考える」実行委員会への参加〕

シンポジウム地域資料の保存と活用を考える実行委員会では、引き続きwebサイト「大阪歴史資料NAVI」で情報発信を行った。また、3月11日に「大阪の地域資料の保存と活用を考えるつどい」を開催し、後藤真氏(国立歴史民俗博物館)による講演「地域の史料情報を大学・博物館とともに保存活用する―総合資料学の試み―」とワークショップを実施した。

〔地域史卒論報告会〕

神戸史学会との共同企画「地域史卒論報告会」は12回目を開催した。これは、大学院には進学せず一般企業などへ就職し、かつ主に兵庫県を中心とした阪神地域をフィールドとする地域史を卒論のテーマにした学生が市民の前で報告を行うという企画で、歴史系の大学で勉強した学生が、社会に出た後も地域遺産や史料を守る活動を続けるきっかけづくりとすることを目的としている。今回は、兵庫教育大学大学院に在籍する現職の中学校教員の方に修了論文を報告していただいた。昨年に引き続き、今回も多くの参加者数を得、卒論での成果を社会に広く還元するという本企画の目的を達成することができた。また、兵庫教育大学大学院に在籍する現職教員の方の歴史系修了論文の発信の場を新たに設けることができた(同報告のもととなった修了論文は『歴史と神戸』322号にも掲載された)。一方で、多様な市民が参加するという会の趣旨を考えた際、卒論報告の内容をわかりやすく伝えるため、史料ネット若手委員から報告者に対するサポートのあり方が今後の課題となる。

〔第3回全国史料ネット研究交流集会〕

「第3回全国史料ネット研究交流集会」を開催した。今年は愛媛大学(愛媛県松山市)を会場に、愛媛資料ネットおよび国立文化財機構を主催に実施された。本集会にあたって当会は、後援団体として名を連ねた。集会では2日間にわたって、高妻洋成氏、森伸一郎氏による講演のほか、全国各地で被災史料保全活動に取り組む21団体からの報告が行われ、当会からは事務局長の吉原大志が報告を行った。集会最後には、史料ネット間の協力や、地域歴史遺産の活用の重要性を指摘した「愛媛から未来へのアピール」が参加者一同によって採択された。

主催◎、共催○、後援●、参加・協力△
◎シンポジウム「資料保全と活用の長い道のり―熊本地震によせて―」
2016年7月3日(日)@神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ
報告:永野弘明(歴史資料ネットワーク)<緊急報告>「熊本地震における被害状況と資料保全活動」、白水智(地域史料保全有志の会)「結果論からの史料保全-何をしていたことが生きたのか」、小林貴宏(山形文化遺産防災ネットワーク)「変わったこと、変わらなかったこと」、藤木透(佐用町教育委員会)「文化財レスキューと資料保全-自治体職員の立場から」、菊地芳朗(ふくしま歴史資料保存ネットワーク)「福島の震災ミュージアム構想の現在」
参加者:54名 インターネット配信視聴者数:約20名

△第18回 火垂るの墓を歩く会
【西宮コース】
2016年8月9日(火)
阪急苦楽園口駅改札口集合 → ニテコ池 → 阪急夙川駅 参加者:約100名
〔オプショナルツアー〕阪急夙川駅 → 香枦園浜・回生病院
【御影コース】
2016年8月13日(火)
阪神石屋川駅南側公園集合 → 石屋川公園 → 御影公会堂 → 成徳小学校 → JR六甲道駅 参加者:約80名
主催=「火垂るの墓を歩く会」実行委員会
協力=神戸空襲を記録する会

△第11回 映画の復元と保存に関するワークショップ
2016年8月26日(金)~28日(日)@東京文化財研究所、株式会社IMAGICAほか
主催=「映画の復元と保存に関するワークショップ」実行委員会

●第3回全国史料ネット研究交流集会
2016年12月17日(土)/ 12月18日(日)@ 愛媛大学南加記念ホール
1日目講演:髙妻洋成 (奈良文化財研究所保存修復科学研究室長)「文化財防災ネットワークの構築について」
森伸一郎(愛媛大学防災情報研究センター准教授)「南海地震に備える史料学と防災減災学の連携」
1日目の報告:大本敬久(愛媛史料ネット)「愛媛の地震史と文化財防災の現状と課題」、田井東浩平(こうちミュージアムネットワーク)「こうちミュージアムネットワークの活動-地域資料保存に向けた取り組み-」、西村 慎太郎(NPO法人歴史資料継承機構じゃんぴん)「「移動する文化資源」への対応と限界-2016年度のNPO法人歴史継承機構じゃんぴんの活動-」、三本周作(歴史資料保全ネット・わかやま)「和歌山県における沿岸部所在寺社を中心とした文化財調査について-南海地震に備えて-」、吉原大志(歴史資料ネットワーク)「歴史資料ネットワークの災害対策-日常的な実践のなかから-」、上村和史(岡山史料ネット)「岡山史料ネットの活動-来るべき南海地震に備えて-」、御厨義道(小豆島史料調査団)「香川県・小豆島史料調査団による歴史資料の保全-歴史資料の災害対策・救済の芽-」、山内利秋(宮崎歴史資料ネットワーク)「南海トラフ地震に向けた宮崎歴史資料ネットワークの活動」、土居祐綺(鹿児島歴史資料防災ネットワーク(準備会))「鹿児島資料ネットと学校教育の連携について」、三澤純(熊本被災史料レスキューネットワーク)「熊本史料ネットの活動概要」
2日目の報告:大石泰夫(岩手歴史民俗ネットワーク)「東日本大震災から平成28年台風10号の被害対応まで-岩手歴史民俗ネットワークの活動―」、佐藤大(NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク)「『歴史資料保全』の先へ-3.11から5年目の取り組み」、小林貴宏(山形文化遺産防災ネットワーク)「山形ネットの可能性と現状」、阿部浩一(ふくしま歴史資料保存ネットワーク)「ふくしま史料ネットの新たな試み」、添田仁(茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク)「関東・東北豪雨の水損史料に刻まれた治水史」、小田真裕(千葉歴史・自然資料救済ネットワーク)「某家資料を救い出す-千葉資料救済ネットで出来ること-」、多和田雅保(神奈川地域資料保全ネットワーク)「大都市圏型資料保全ネットワークの活動について」、中村元(新潟歴史資料救済ネットワーク)「新潟歴史資料救済ネットワークの活動について」、宮沢崇士(長野被災建物・史料救援ネットワーク)「2014年長野県北部地震と資料保全」、鈴木努(地域史料保全有志の会)「拠点施設の会館-栄村での2016年の史料保全活動」、徳野隆(歴史資料保全ネットワーク・徳島)「徳島史料ネットの活動-この2年間を中心に-」
主催=愛媛資料ネット、独立行政法人国立文化財機構
共催=愛媛大学法文学部、科学研究費補助金基盤研究(S)「災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立―東日本大震災を踏まえて―」(研究代表者:奥村弘)研究グループ
後援=岩手歴史民俗ネットワーク、茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク、岡山史料ネット、香川県資料館協議会、鹿児島歴史資料防災ネットワーク、神奈川地域資料保全ネットワーク、熊本被災史料レスキューネットワーク、こうちミュージアムネットワーク、四国ミュージアム研究会、地域史料保全有志の会、千葉歴史・自然資料救済ネットワーク、長野被災建物・史料救援ネットワーク、新潟歴史資料救済ネットワーク、福井史料ネットワーク、ふくしま歴史資料保存ネットワーク、NPO 法人宮城歴史資料保全ネットワーク、宮崎歴史資料ネットワーク、山形文化遺産防災ネットワーク、NPO 法人歴史資料継承機構じゃんぴん、歴史資料保全ネットワーク・徳島、歴史資料保全ネット・わかやま、伊予史談会、愛媛ミュージアム研究会、愛媛県教育委員会、愛媛県歴史文化博物館、愛媛大学法文学部附属四国遍路・世界の巡礼研究センター
参加者:2日間のべ約280名

○東北大学災害科学国際研究所シンポジウム「歴史をつなぐ、人をつなぐ―旧気仙郡における被災史料保全活動―」
2017年3月4日(土)@大船渡市魚市場多目的ホール
報告:奥村弘(歴史資料ネットワーク代表)「東日本大震災と史料保全ネットワーク」、大林賢太郎(京都造形芸術大学歴史遺産学科)「京都造形芸術大学における被災史料の保存処置と修復」、小野塚航一・加藤明恵(歴史資料ネットワーク事務局)「佐々木家資料クリーニング作業の経過と今後の展望」、川内淳史(歴史資料ネットワーク副代表)「大船渡湾開発と地域社会―被災史料からみる大船渡の近代」、熊谷誠(三陸ジオパーク推進協議会)「唐丹村文書の保全活動と昭和三陸津波地震」、佐々木啓(茨城大学人文学部)「唐丹村文書から何がわかるのか―兵事史料を中心に」
参加者:約20名

◎第12回 地域史卒論報告会
2017年3月19日(日)@六甲道勤労市民センター
報告:上原駿一(大阪大学)「近世中後期の城詰米制と幕府上方代官支配―但馬生野代官を中心に」、福永志摩(神戸大学)「在郷町池田における町政機構の改革」、比嘉美智子(兵庫教育大学)「教員の戦争記憶」
共催=神戸史学会
参加者:31名

●神戸・阪神歴史講座第17回「離宮と御用邸が設けられた時代」
2017年7月1日(土)@神戸市立兵庫勤労市民センター
後援:村上忠男「神戸に設けられた離宮と御用邸」、高橋健司「御用邸と大津事件を追って」
主催(共催)= 神戸史学会、サロン・ド・サモン

△兵庫県文化遺産防災研修会
2017年7月5日(水)@神戸大学大学院農学研究科B棟1階101教室
報告:山下史朗(兵庫県教育委員会文化財課課長)「兵庫県の文化財防災体制について」、清水陽(神戸市危機管理室計画担当課課長)「神戸市の地域防災体制について」、奥村弘(神戸大学地域連携推進室室長)「地震等災害後の文化遺産防災を進めるために」、松下正和(神戸大学地域連携推進室特命准教授・歴史資料ネットワーク副代表)「兵庫県内での風水害による水損史料救出活動について」
主催=神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター、兵庫県教育委員会、
神戸市教育委員会
共催=COC+ひょうご神戸プラットフォーム協議会
協力=科学研究費基盤研究(S)「災害文化形成を担う地域歴史資料学の確立―東日本大震災を踏まえて-」(研究代表者:奥村弘)研究グループ

3 震災記録保存と文化財防災

〔水損史料修復ワークショップと学会等での報告〕

今年度も引き続き、水損史料修復ワークショップと学会等での報告を下記の通り行った。
今年度は、運営委員や事務局員が全国各地で精力的にワークショップを行ったほか、資料保全に関わる学会等での報告も多数行い、史料ネットのこれまでの活動蓄積を積極的に発信し、各地資史料ネットや学会との共有に努めた。

参加・協力△(五十音順)
△奥村弘「東日本大震災5年―被災歴史資料保存の現状と課題を阪神・淡路大震災から考える」(第16回地域防災フォーラム「災害復興~未来のための生活再建支援」)@岩手大学、2016年8月3日

△Hiroshi Okumura “”Memory” preservation activity of disaster areas and its significance : From Hanshin-Awaji Earthquake to the Great East Japan Earthquake”(国際考古学会議第8回京都大会)@同志社大学、2016年8月29日

△奥村弘「豪商近藤家と市場村の近代―名望家の時代―」@小野市好古館、2017年1月7日

△加藤明恵・吉原大志「被災時における文化財レスキューの初動」(平成28年度文化財保存修復専門家養成実践セミナーレベル1・Bコース 特別講義)@東京国立博物館小講堂、2016年9月5日、参加者約20名

△加藤明恵・永野弘明・吉原大志「実習・乾式クリーニング」(国立文化財機構防災ネットワーク推進事業研修会)@熊本県博物館ネットワークセンター、2016年10月10日・11日

△加藤明恵「被災史料の救出・保全―歴史資料ネットワークのあゆみ―」(神戸学院大学現代社会学部 社会貢献実習Ⅱ)@神戸学院大学ポートアイランドキャンパス、2017年1月19日、参加者約30名

△川内淳史「現代文書の整理」(香寺歴史研究会「地域史料保存研修会」)@犬飼公民館、2016年7月20日

△川内淳史「災害から地域史料を守る―大規模自然災害と地域歴史遺産―」(まちづくり地域歴史遺産活用講座)@神戸大学、2016年10月15日

△川内淳史「市史編さんとまちづくり」(丹波市歴史講座「地域の歴史遺産から学ぶわたしたちの丹波市」)@青垣住民センター、2017年1月21日

△川内淳史「自治体史編さんという〈場〉―三木市における地域活動と歴史文化―」(第15回歴史文化をめぐる地域連携協議会)@神戸大学瀧川記念学術交流会館、2017年1月29日

△河野未央・吉原大志「トークイベント「巡回展 波のした、土のうえ in 尼崎」への参加」@水堂須佐男神社、2017年1月14日、参加者約10名

△松下正和・天野真志・内田俊秀「飽和水蒸気加熱による汚損古文書の脱臭」(文化財保存修復学会第39回大会)@金沢歌劇座、2017年7月1日

△松下正和・天野真志・内田俊秀・藤田和久・酒井浩一・吉川圭太・古田雅一「和紙に発生したカビの放射線殺菌に関する研究」(文化財保存修復学会第39回大会)@金沢歌劇座、2017年7月2日

△松下正和「地区住民との古文書整理・活用・保存の実践例」(中井権次顕彰会古文書取扱研修会)@柏原八幡神社八幡会館、2016年7月31日、参加約20名

△松下正和「襖下張りはがし~昔の反故紙を歴史資料に~」(平成28年度文化財を災害から守る-歴史資料保存修復ワークショップ-)@姫路大学、2016年8月3日、参加約15名

△松下正和「災害から地域の記録資料を守る活動」(岐阜大学地域科学部「地域学実習」)@岐阜大学地域科学部地32セミナー室、2016年8月8日、参加約30名

△松下正和「地域の歴史資料の調査・活用法」(平成28年度姫路大学教員免許状更新講習「地域資料の保存と活用~地域に生きる社会科教員の役割~」)@姫路大学、2016年8月23日、参加約20名

△松下正和「災害とアーカイブズ」(平成28年度長期アーカイブズ・カレッジ〔科目6〕アーカイブズ管理研究Ⅳ保存管理(2))@国文学研究資料館、2016年9月9日、参加約60名

△松下正和「大規模自然災害から博物館資料を守る」(平成27年度大阪大学博物館実習講義・ワークショップ)@大阪大学総合学術博物館、2016年9月15日、参加約60名

△松下正和「播磨の災害史-地震を中心に」(姫路市シニアオープンカレッジ)@姫路大学、2016年10月6日、参加約60名

△松下正和「文化財の救出-水濡れ歴史資料を救う方法-」(いなみ野学園大学院講座)@いなみ野学園、2016年10月18日、参加約50名

△松下正和「大規模自然災害から博物館資料・民間所在資料を守る」(岐阜大学博物館資料論・WS)@岐阜大学教育学部、2016年12月7日、参加約40名

△松下正和「大規模自然災害から民間所在資料を守る」@関西大学、2016年12月14日、参加約20名

△松下正和「日本古代の災害史~播磨・摂津を中心に~」(KCC・にっしん第53期リフレッシュサロン)@明石市生涯学習センター・子午線ホール、2017年2月22日、参加約150名

△松下正和「災害資料を活かした自主防災活動について」(「歴史から学ぶ防災2016-災害の記憶を未来に伝える-」現地学習会)@印南町公民館、2017年2月25日、参加約150名

△松下正和「下張り文書の保全と活用」(第13回尼崎歴史講座ふすまから出てきた歴史)@中央地域振興センター(尼崎市)、2017年3月25日、参加約50名

△松下正和「歴史文化を活かしたまちづくり-住民主体の集落史づくり・地域調べ活動」(平成29年度兵庫県いなみ野学園大学院講座)@いなみ野学園、2017年4月28日、参加約50名

△松下正和「彫刻下絵が示す中井権次の新たな魅力-中井家保管の下絵と古文書整理作業の意義-」@柏原自治会館、2017年5月20日

△吉原大志「被災した紙資料の応急処置と市民ボランティアの役割」(第11回映画の復元と保存に関するワークショップ)@東京文化財研究所、2016年8月26日、参加約30名

△吉原大志「災害から歴史資料を守るための相互協力」(かんさい・大学ミュージアム連携)@大阪商業大学、2016年11月22日、参加約20名

△吉原大志「阪神・淡路大震災以後の資料保存と「史料ネット」運動」(大阪歴史科学協議会帝国主義研究部会)@淀川区民センター、2017年1月16日、参加約15名

〔阪神・淡路大震災資料の保存・活用に関する研究会(被災地図書館との震災資料の収集・公開に係る情報交換会)〕

2017年1月23日に神戸大学社会科学系図書館で開催された「第17回阪神・淡路大震災の保存・活用に関する研究会」に参加した。なお同研究会は、2011年度より東日本大震災被災地の大学・図書館と阪神・淡路大震災に関する資料保存機関を結ぶ「被災地図書館との震災資料の収集・保存に係る情報交換会」と共同開催している。今年度の研究会では、熊本地震の発生を受けて震災資料の保存の取り組みを行っている「くまもと森都心プラザ図書館」からの報告のほか、南相馬市立中央図書館、神戸都市問題研究所、神戸大学附属図書館震災文庫からの震災資料の収集・保存に関する報告がなされた。また意見交換の場では、参加各館より震災資料の収集・保存に関する現状と課題が紹介されると共に、資料の保存方法や活用について、活発な議論が交わされた。また会前日の22日には、関連企画としてフィールドワーク「阪神・淡路大震災のまち・歴史まちあるき」が行われ、震災を歴史の中で捉え直し、次世代に継承していくことを企図したフィールドワークが実施された。

4 災害対策

〔東日本大震災・長野県北部地震〕

2011年3月11日に発生した東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)とそれに伴う津波災害、およびその翌日に発生した長野県北部地震により、東日本地域は甚大な被害に見舞われた。史料ネットでは震災発生直後より被災地の史資料ネットの活動の立ち上がりを支援するとともに、被災地後方より活動のバックアップを行った。また2011年4月に文化庁の提起によって結成された被災文化財等救援委員会(2013年3月解散)の構成団体として参加し、同委員会による文化財レスキュー事業の一翼を担った。2014年7月には、旧救援委員会の枠組みを引き継ぐ形で、独立行政法人国立文化財機構によって「文化財防災ネットワーク推進事業」が開始され、史料ネットも当事業による文化遺産防災ネットワーク推進会議の参画団体となった。
震災発生より6年が経過したが、被災地で活動する各史資料ネットでは、現在でもレスキュー資料の整理およびクリーニング作業が継続して行われている。これら各地の史資料ネットと情報の共有をはかりつつ、必要な支援を継続して行っているところである。

〔2016年熊本地震〕

2016年4月14日以来、最大震度7を記録する2回の大きな地震のほか、これまでにない頻度での余震が継続的に発生した。同月23日には熊本大学文学部附属永青文庫研究センターに事務局を置く、県内の大学関係者や学芸員らによる「熊本被災史料レスキューネットワーク(熊本史料ネット)」が立ち上げられ、被災地での被災資料救済保全活動を開始した。当会は現地関係者との連絡を通じて情報を集めるとともに、熊本史料ネットの活動資金のカンパ受け入れを代行している。また、2016年10月に国立文化財機構が主催する「文化財防災ネットワーク推進事業研修会」(於熊本県博物館ネットワークセンター)に委員を派遣し被災史料の応急処置等のワークショップを行うなど、地元関係者へのノウハウの普及などの面で協力を行った。

〔台風10号豪雨水害〕

2016年8月に上陸した台風10号によって、岩手県ほか各地で大きな被害が発生した。当会は被害状況の把握に努め、9月3日にホームページに「2016年台風10号の被災地のみなさま、ならびに災害ボランティアのみなさまへ(地域資料保全のお願い)」を掲載し、資料保全の呼びかけを行った。また、この台風によって被災した遠野みらい創りカレッジ所蔵資料については、現地関係者からの被害情報発信を受け、史料ネット委員を現地に派遣し、クリーニング作業の支援を行うとともに、水損資料の取り扱いについての情報提供を行った。

〔鳥取県中部地震〕

2016年10月21日、鳥取県中部を震源とする地震が発生した。当会は、山陰歴史資料ネットワーク(山陰史料ネット)と連絡を取り合いながら現地の被害情報の収集を行い、10月24日にホームページに「鳥取県中部を震源とする地震の被災地のみなさま、ならびに災害ボランティアのみなさまへ(歴史資料保全のお願い)」を掲載し、資料保全の呼びかけを行った。また、山陰史料ネット・鳥取地域史研究会が10月25日に発表した「鳥取県中部地震による被災歴史資料の保存に関する緊急アピール」を、当会ホームページに掲載し、情報発信への協力を行った。

5 組織と運営

今年度の運営委員会は第167回(2016年7月3日)から第178回(2017年6月5日)までの計12回を開催した。運営委員の委員会への出席率もよく、活発に意見を交わした。
従来のメールニュースの配信に加え、2012年7月1日に開設したホームページを中心に情報提供を行った。引き続き、ブログを中心とした情報提供を行い、2016年6月から2017年5月末までの訪問数は25,955、ページビューは47,165であった。またtwitterアカウント(@siryo_net)を通じたリアルタイムの情報発信や、facebookページの活用も進めている。ニュースレターは、3回(2016年11月18日第83号、2017年2月27日第84号、2017年6月15日第85号)発行した。なお、過去に発行したニュースレター(第1号~第70号)のPDF化データは、神戸大学附属図書館震災文庫のホームページ上で公開している。
2017年6月現在の会員数は学会会員8団体、個人会員160名(昨年比4増)、学生・院生会員9名(増減無)、サポーター48名(同比1増)、ニュースレター購読60名(同比4減)の計285名(同比1増)である(2016年度いっぱいでの退会予定者も差し引き済)。
なお、史料保全活動に関わるボランティア登録数は、2017年6月5日現在103名である。

2016年度 運営委員・事務局・会計監査委員一覧(五十音順)  ※太字表記は事務局員兼任
<運営委員>大国正美(神戸史学会)・奥村弘(神戸大学史学研究会)・小野塚航一(大阪歴史科学協議会)・加藤明恵(大阪歴史学会)・川内淳史(個人会員からの選出)・河野未央(個人会員からの選出)・佐賀朝(大阪歴史科学協議会)・永野弘明(大阪歴史科学協議会)・古林小百合(日本史研究会)・藤田明良(個人会員からの選出)・前田結城(個人会員から選出)・松岡弘之(大阪歴史科学協議会)・松下正和(個人会員からの選出)・吉川圭太(個人会員からの選出)・吉原大志(個人会員から選出)
<事務局>浅利文子(事務局員)・奥村弘(代表)・川内淳史(副代表)・小野塚航一(事務局員)・加藤明恵(事務局員)・藤田明良(副代表)・松岡弘之(事務局)・松下正和(副代表)・吉川圭太(事務局員)・吉原大志(事務局長)
<会計監査委員>松本充弘・長町顕

6  出版および論文などの掲載

史料ネット委員による論文などの掲載は下記の通りである。

奥村弘「地域歴史文化拠点としての大学の重要性―災害が続く日本列島の中での取り組みから」『歴史学研究』955号、2017年3月

奥村弘「地震・水害時の歴史資料保存活動の展開と地域歴史資料学の提起」(歴史学研究会編『第4次現代歴史学の成果と課題 第3巻 歴史実践の現在』績文堂、2017年5月)

加藤明恵・吉原大志「被災時における文化財レスキューの初動―歴史資料ネットワークの活動から―」(『文化財保存修復専門家養成実践セミナー レベルⅠ・Bコース(平成28年度) 講義録』、特定非営利活動法人文化財保存支援機構、2017年3月)

川内淳史「阪神・淡路大震災被災地における震災資料の現状と課題―民間資料と行政文書について―」『日本歴史学協会年報』32号、2017年6月刊行予定

永野弘明「資料保全活動の現状とこれから‐第三回全国史料ネット研究交流集会参加記」(『地方史研究』387号、2017年6月刊行予定)

松下正和『播磨の災害史-地震を中心に』、姫路大学、2016年10月

松下正和「兵庫県丹波市内での民間所在史料の保存と活用について」国文学研究資料館編『社会変容と民間アーカイブズ』、勉誠出版、2017年3月

 

2016年度決算(2016年6月16日~2017年6月15日)

2016年度通常会計決算報告

2016年度通常会計決算報告

2016年度災害会計決算報告

2016年度災害会計決算報告

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