2月14日・15日に神戸で開催しました全国史料ネット研究交流集会には、2日間で約250名の方にご参加いただき、各地の取り組みに学びながら交流を深めることができました。ご報告いただきました皆様、ポスターなどを展示してくださった皆様、ご参加くださいました皆様、会場をご提供くださった野村證券神戸支店の皆様、ありがとうございました。主催者として心よりお礼申し上げます。
当日のインターネット中継はうまくいきませんでしたが、集会の内容については別のかたちで改めて発表させていただく予定です。しばらくお待ち下さい。
また、2月15日に参加者一同で「『地域歴史遺産』の保全・継承に向けての神戸宣言」を採択いたしましたので、ご報告申し上げます。私たちは今後も全国の皆様とともに歴史資料・文化財等の保存・継承に向けた取り組みを進めてまいります。今後ともご支援たまわりますよう、よろしくお願い申し上げます。
「地域歴史遺産」の保全・継承に向けての神戸宣言
大災害から歴史資料を守る取り組みは、1995年の阪神・淡路大震災以降、大規模地震・風水害が連続する状況の中で、全国各地で広範な展開を見せています。1995年2月、大震災で被災した歴史資料を滅失の危機から救うため、関西の歴史学会を中心に「歴史資料保全情報ネットワーク(略称:史料ネット)」が結成され、以来、全国の歴史研究者や大学院生、博物館、文書館、図書館関係者、郷土史研究者、そして地域の歴史文化に関心を持つ多くの市民との連携のもと、多数の被災資料を救出して参りました。1996年にはボランティア組織「歴史資料ネットワーク」へと改組・名称変更を行い、また2002年には組織を会員制へとあらため、会員やサポーターを中心とする多くの方々からの支援のもと活動を継続し、本日、20周年を迎えました。
2011年の東日本大震災に際しては、津波の被災地で瓦礫の中から個人やコミュニティの記憶を伝える資料が丁寧に拾い上げられるなど、大災害時に市民や地域の記憶を守ることが、日本全体で社会的通念として定着してきました。史料ネットの結成から20年がたった現在、全国にはそれぞれの地域の特質を生かしつつ、20を超える大規模自然災害に対応する歴史資料の保存についてのネットワーク組織が生まれており、東日本大震災では、相互に連携した活動を行いました。
この20年の間に、日本における災害時の歴史資料・文化財等の救済・保全に向けた体制は、大きな進歩を遂げています。阪神・淡路大震災に際して文化庁の呼びかけで結成された「被災文化財等救援委員会」による文化財レスキュー事業は、日本史上初めての全国規模の歴史資料・文化財等の救済・保全活動として大きな成果を挙げました。その経験をもとに東日本大震災後に再度実施された文化財レスキュー事業においては、阪神・淡路大震災以上の規模をもって、広範多岐にわたる歴史資料・文化財等の関係者の連携が行われ、「文化財」の枠に捉われない、未指定文化財や民間所在資料などの地域の歴史遺産の保全活動が行われたことは特筆すべきことです。このような経験は、災害からの復旧・復興において、地域の歴史文化が重要な役割を果たすこと、また、そのために歴史資料・文化財等に関する関係者が広く連携・協力して対応することの重要性を認識させるものでした。
21世紀に入り、日本列島の中で巨大地震や集中豪雨など大規模自然災害が常態化し、人口が減少する中で地域の歴史文化が消失する危機を迎えています。必ず起こる大規模自然災害から歴史資料・文化財等を守り、大災害の記憶を含め後世に伝えていくことは、現在を生きる私たちが次の世代に対して果たすべき重要な責務です。
私たちは、本日の「全国史料ネット研究交流集会」の開催を機に、全国の関係者間の連携を強め、大規模自然災害に対応し得る歴史資料・文化財等の保存・継承に向けた取り組みを進めていくために、以下のことを宣言します。
一、基本的な考え方
歴史文化に関わる多様な分野の専門家と地域の歴史文化の多様な担い手が、ともに手を取りあって、文化財等の保存・継承活動を一層強めていきます。
一、専門家の役割
多様な分野の専門家は、その専門領域を超えて、地域の方々との持続的な連携を進め、相互につながりを強めていきます。
一、市民の役割
地域の歴史文化の担い手である市民は、文化遺産の保存・継承活動へ積極的に参加し、またその活動を支援します。
一、政府、地方公共団体および大学等の役割
政府、地方公共団体および大学等が、この活動を支援し、地域の歴史文化を豊かにするための基礎的な環境を、縦割りを超えて整備するよう求めます。
2015年2月15日
「全国史料ネット研究交流集会」参加者一同
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