このたびの熊本地震の被害につきまして、あらためて心よりお見舞い申し上げます。
そして、被災地の一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げる次第です。

歴史資料ネットワークではこの間、現地関係者と連絡を取り合い、このたびの熊本地震て被災した地域の歴史資料・文化財への対応のための情報共有を行ってまいりました。
そのことについて、4月23日、熊本で現地関係者による会合が持たれ、正式に「熊本史料ネット」の設立が決定されたとの報告を受けました。

正式名称 :熊本被災史料レスキューネットワーク
略称   :熊本史料ネット
代表   :稲葉継陽(熊本大学文学部附属永青文庫研究センター)
事務局長 :三澤 純(熊本大学文学部)
事務局所在:熊本大学文学部附属永青文庫研究センター
電話:096-342-2304
e-mail:eiseiken◆kumamoto-u.ac.jp(◆を@に替えてください)

歴史資料ネットワークとしましては、引き続き一時保管場所の照会・確保、活動資金の支援・カンパの呼びかけなど、熊本史料ネットの活動を全面的にサポートしていきたいと考えます。
引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

以下、当会の奥村代表より熊本史料ネットのみなさんにお送りしたメッセージを転載いたします。

熊本被災史料レスキューネットワークの皆さま、全国からの支援の皆さま:

歴史資料ネットワークの代表委員の奥村弘です。
21年前に私達が史料ネットを立ち上げたのは、震災から19日目のことでした。大きな地震が続く中で、現地の方々がこのような早さでネットワークを作られたことに驚くとともに、熊本県の地域歴史文化の底力はすごいなと率直に思いました。

これまでの日本各地の被災地での活動は、地域歴史文化を未来につなぐための様々な地域の歴史遺産を保全するということを基本としながらも、多様な形が取られ来ました。それは、大規模自然災害の特質、その地域のつながりのあり方、歴史文化遺産の残り方の特色、全国からの支援状況がそれぞれ違うことに起因しています。
全国からの支援状況という点では、東日本大震災後、全国的な関係者のネットワークが大きく広がり、それが現在も継続されているというところにあります。しかしながら、このネットワークをどのように活かしていくのかという点では、これまで経験がなく、今回がはじめての対応になるかと考えます。なんとか、現地で活動されている方々の足手まといにならないようにかんばっていきたいと存じます。おそらく不十分な点や課題が次々に起こってくるかと思いますが、率直に指摘していただければと存じます。
災害時には、なにより相互の情報の共有が大切だと考えています。またやり取りについてはメール等が多くなるのですが、具体的な対応方法の決定等については関係者がなるべく直接に議論し、納得しあうことが重要かと思います。

私達が最初に活動をはじめた際に考えたことは、多くの歴史資料が失われている中で、「ひとつでも救えれば」ということでした。現地では、安全を確保すること、自分自身の生活対応や職場での対応が最優先となります。その間をぬっての活動になるかと思います。なかなか時間が取れずに悔しい思いをされた方も沢山おられました。それでも様々な形で、ひとつでも出来ることを進めるということが当時基本でした。
また、私自身も経験したことですが、阪神・淡路大震災では、被災した状況の中でも日常と同じように考え、それがさらにストレスを生みだすということがありました。最初に、壊れかけた蔵から歴史資料保全を進めたとき、それは被災された方の日常生活の荷物全体の引っ越しになりました。その時はじめて、日常とは違うとはっきり感じたことを今でも強く思い出します。日常とちがった体調管理も重要で、お互いに積極的に声を掛け合っていたことも思い出します。

なお神戸の場合は、当初、被害が少なかったお隣の大阪からの恒常的な人的物的な支援が極めて重要な意味を持ちました。当初、史料ネットの事務局は災害の比較的少ない大阪市に接する尼崎市立地域研究史料館にありました。電話対応等の事務局的な機能、レスキュー資材の保管、一時保管場所として館のインフラを提供していただいてはじめて、震災対応が可能となりました。恐らくは、今回も、形は違うでしょうが、激震地から少し離れている方々の支援は重要かと思います、

熊本被災史料レスキューネットワークの皆さま、全国からの支援の皆さま、今後もよろしくお願いします。