当ネットワーク代表の奥村弘氏による『大震災と歴史資料保存―阪神・淡路大震災から東日本大震災へ―』が、吉川弘文館より刊行されました(230ページ、定価:3200円+税)。

本書は、阪神・淡路大震災(1995年)に歴史資料ネットワークを設立して以来、
被災資料や震災資料(災害資料)の保全活動を行なってきた奥村氏が、
東日本大震災を受けて、あらためて阪神・淡路大震災から提起された資料保全活動の意義を述べたものです。
本書の論点は多岐にわたります。
ぜひ多くの方に手にとっていただきたい一書です。

現代日本社会において地域の記憶を未来に引き継ぐために私たちはなにができるのか。阪神・淡路の事例から見るなら、20年はかかると見られる東日本大震災への対応の中で、阪神・淡路大震災から東日本大震災へとその経験を継承し、想像力をもって未来を考えていくために、本書が少しでも役に立つことができればと考えている。(はじめに、P4)

目次は以下のとおりです。
【目次】

■はじめに
■序章 阪神・淡路大震災から東日本大震災へ

はじめに―未来を語るための基礎学としての歴史学と二つの大震災―
1 歴史資料保全活動とそこでの試行錯誤の重要性
2 歴史的に社会を捉える市民の力を強めることの重要性
■第Ⅰ部 大規模自然災害における歴史資料保全のあゆみ
・第一章 大規模自然災害と地域歴史遺産保全
はじめに
1 阪神・淡路大震災後の歴史資料保全活動と史料ネットの活動
2 地域歴史遺産の保全と活用のために
おわりに
・第二章 現代都市社会の歴史意識と歴史学の課題
はじめに
1 なぜ歴史意識を問題とするのか
2 近代都市形成と歴史意識をめぐって―「モダン」な都市神戸という虚構―
3 戦後の歴史資料保存運動から
おわりに
・第三章 時代が求める歴史研究のあり方とは
はじめに
1 震災後のボランティアと史料ネットの活動
2 歴史資料と歴史研究のあり方をめぐって
3 歴史学の実践と主題の発見
4 災害文化形成と「国民国家」批判の歴史学
おわりに
■第Ⅱ部 震災の記憶を未来につなぐ―災害資料の保存活用―
・第一章 震災資料の調査保存活用―歴史文化の基礎をどうつくるのか―

はじめに
1 初期の史料ネットの動き
2 図書館などの震災資料の収集保存活動と市民による震災記録
3 震災資料収集保存活動への史料ネットの具体的な取り組み
4 震災資料収集保存活動の困難
5 震災資料調査・収集・保存の展開
6 「阪神・淡路大震災記念協会」と「震災・まちのアーカイブ」
7 記念協会の大規模震災資料調査事業の開始
おわりに
・第二章 人と防災未来センターの開設と大震災資料保存の現況
はじめに
1 人と防災未来センター所蔵震災資料の公開、活用をめぐって
2 神戸大学大学院人文学研究科地域連携センターでの震災資料研究の展開
■第Ⅲ部 災害に強く、豊かな地域歴史文化を生み出すために
・第一章 市民社会形成の基礎学としての歴史研究の今日的位置

はじめに
1 市民社会形成の基礎学としての「戦後歴史学」
2 課題の共有を意識的に追究することの困難性
3 歴史的な社会把握に対する市民レベルでの関心と力量の拡大
4 地域歴史遺産への取り組み
おわりに
・第二章 地域歴史文化における大学の役割
はじめに
1 神戸大学における地域連携の特質について
2 持続性を重視する各部局地域連携センター中心の組織
3 小野市との地域歴史文化についての取り組み
おわりに
■補章 被災史料が語る地域の近代―元尼崎藩大庄屋・岡本家文書から―
はじめに
1 村用箪笥のなかの岡本家文書
2 青野水源池設置問題
おわりに
■あとがき
■参考文献一覧(歴史資料ネットワーク関係 / 東日本大震災関係)