新潟大学の矢田俊文さんから下記のお知らせをいただきました。
震災と資料保全をめぐるシンポジウムです。ふるってご参加くださるよう、お願い申し上げます。

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シンポジウム「新潟県中越地震から東日本大震災へ-被災歴史資料の保全・活用の新しい方法をさぐる-」

【日時】2012年11月10日(土)13時~17時50分
【場所】新潟大学総合教育棟D棟1階大会議室
【主催】新潟大学災害・復興科学研究所危機管理・災害復興分野,科学研究費補助金・基盤研究(S)「大規模自然災害時の史料保全論を基礎とした地域歴史資料学の構築」(代表・奥村弘、被災地フォーラム)
【共催】新潟大学人文学部附置地域文化連携センター、新潟歴史資料ネットワーク、新潟史学会

大規模自然災害が日常的に起こり続ける日本列島で、わたしたちは災害に強い地域の歴史文化をどのように形成し、豊かにしていくのか。東日本大震災以降、被災地の個人や地域の歴史文化を未来につなぎ、崩壊の危機をむかえた地域社会の再生のために、あらためて地域歴史資料が注目されている。
津波被災地域では、亡くなった方々の記憶にまつわる写真や位牌、様々な遺品をがれきの中から丁寧に探し集め、これを遺族に返却するという活動が広範に行われた。また、津波で土砂をかぶったお地蔵さんを住民が掘り出し、それを地域の記憶を伝えるものとして、安置する映像も全国に伝えられた。亡くなった人びとや地域にまつわる記憶、それを伝える品々は、被災者が生き、そしてかつての地域社会を取り戻していくなかで、大きな役割を担っているのである。
しかし、その一方で、市町村合併や高齢化など、急激な社会構造の変化のなかで、中山間部では地域社会が本来的な機能を失い、そこで保存されてきた地域歴史資料が滅失の危機をむかえている。地震による災害、地球温暖化に関連する大規模風水害の続発が、この事態を早めることになった。すでに、指定文化財を基本とした歴史資料保存や、地域住民による保全に依拠するのみでは、地域歴史資料の保全が不可能なことは明確であろう。この危機的状況のなかで、地域歴史資料を効果的に保全し、地域社会の再生に向けて活用するために、どのような手立てを講じればよいのか。
2004年の新潟県中越地震以降、新潟県では、災害時の地域歴史資料の保全・活用をめぐって、先進的な取り組みが展開されてきた。県の「地域防災計画」には、「文化財の地震防災対策」として未指定文化財への対応が盛り込まれるなど、行政と民間が研究と交流を重ね、市民にも開かれた活動を続けている。東日本大震災においても証明されたように、そこで得られた教訓は、被災歴史資料の保全・活用の新しい方法として多くの示唆に富んでいる。
また、被災地の中山間部では、急激な人口移動のために過疎化が進み、地域社会が本来的に持っていた地域歴史資料を保全する機能が失われつつある。若い世代への歴史文化の継承が進まず、救われた歴史資料が戻る場所さえない地域も存在する。新潟県中越地震における山古志村をはじめとする、中山間部における被災地の現状と課題をふまえて、東日本大震災後の地域社会に予測される事態を見通すことが必要であろう。
このように新潟県中越地震から東日本大震災までの歴史資料をめぐる活動の意義と、被災地の現状と課題をふまえて、来たるべき大規模災害に向けた地域歴史資料の保全と活用のための新しい方法を探りたい。

1部 新潟県の大規模自然災害と資料保全の取り組み-新潟県中越地震から東日本大震災へ

東日本大震災から1年間の新潟での活動成果を公開するとともに、それら取り組みの意義を再認識する。

13時~14時45分
趣旨説明
1東日本大震災から1年間の新潟県の資料保全の活動を考える
・県外からみた新潟県の取り組みの特徴
奥村弘(神戸大学大学院人文学研究科)「新潟の取り組みに学ぶ-『災害・復興と資料』1号を読む-」
・パネルディスカッション
パネラー
外部評価 小林貴宏(山形文化遺産防災ネットワーク)
その後の取り組み報告・内部の評価
・物資支援の問題 森行人(新潟市歴史博物館)・大楽和正(新潟県立歴史博物館)
・民俗資料の問題 飯島康夫(新潟大学災害・復興科学研究所)
・考古資料の問題 齋藤瑞穂(新潟大学人文学部)
・震災資料の問題 田中洋史(長岡市立中央図書館文書資料室)
外部評価 奥村弘
司会:矢田俊文(新潟大学災害・復興科学研究所)

 

2部 減災と復興にむけた現代的課題をさぐる

災害によって地域社会はどのような変質をとげたのか、そして今後は?
地域社会が弱体化するなかで地域歴史資料を保全・活用するための方策を探る。

15時~17時50分
2 田中洋史(長岡市立中央図書館文書資料室)「新潟県中越地震と山古志村史編集資料」
3 小林准士(島根大学)「山陰地方の過疎地における史料保存の課題」
4 松下正和(近大姫路大学教育学部)「二〇〇九年台風九号被災資料の保全と活用佐用郡地域史研究会・佐用町教育委員会との連携-」
5 多仁照廣(敦賀短期大学)「福井水害救出から見えた史料の社会的喪失」
6 蝦名裕一(東北大学)「宮城県栗原市における歴史資料保全活動-二度の震災をうけて-」
7 白水智(中央学院大学)「長野県栄村における文化財保全活動のこれまでと今後の課題」
8 青木睦(国文学研究資料館)「岩手県の震災被害と歴史資料-文化財レスキューの現場から-」
パネルディスカッション
パネラー:報告者
司会:矢田俊文,奥村弘

懇親会 18時30分~ 内野駅周辺

参加いただける方は、10月31日(水)までに災害史料シンポ事務局(新潟大学人文学部矢田俊文研究室)へご連絡いただけると幸いです.
Eメール yata◆human.niigata-u.ac.jp(◆を@に変えてください)
懇親会も行いますので,こちらも是非ご参加ください.