このたび東京大学出版会から、奥村弘編『歴史文化を大災害から守る 地域歴史資料学の構築』が刊行されました。これは科学研究費補助金基盤研究(S)「大規模自然災害時の史料保全論を基礎とした地域歴史資料学の構築」研究グループによるこれまでの共同研究の成果となるもので、各地の保全活動に取り組んでおられる方々の論考や実践の具体例をおさめたものです。当会の東日本大震災に関する取り組みについても3部7で報告させていただいております。ぜひご覧ください。

 

目次

序  (奥村弘)

I 地域歴史資料学の構築に向けて
1 なぜ地域歴史資料学を提起するのか――大規模災害と歴史学 奥村 弘
2 歴史資料を千年後まで残すために 平川 新
3 地域資料学を構想する糸口――場・主体・よそ者・当事者 市沢 哲
4 とらえなおされる地域歴史資料 三村昌司
5 震災を次代に伝えるために――震災アーカイブの構築 佐々木和子
6 地域の歴史・文化資料とどのように向き合うか 久留島浩

II 地域歴史資料という見方の発見と展開――続発する大災害と地域歴史資料(1)
1 地域歴史資料の「保全」から「活用」へ――阪神・淡路大震災の被災地からの発信 坂江 渉
2 過疎化が進む地域と資料のゆくえ――山陰地域における資料保存の課題 小林准士
3 歴史資料を守り、伝えるために――愛媛資料ネットの活動より 寺内 浩
4 「宮城方式」での保全活動・一〇年の軌跡――技法と組織に見る成果と課題 佐藤大介
5 文化大国NIPPONの裏側――福井水害の史料救済活動と歴史資料の”社会的消滅” 多仁照廣
6 土蔵まるごとの救出から広域災害支援へ――新潟県中越地震から東日本大震災 矢田俊文
7 多くの人に支えられた救出活動――福岡県西方沖地震後の史料レスキュー 伊藤昭弘
8 予防ネットという考え方――岡山史料ネットのこれまで 今津勝紀

III 東日本大震災の現場から――続発する大災害と地域歴史資料(2)
1 大規模災害時における資料保全ネットの活動――東日本大震災における宮城資料ネットの活動から 蝦名裕一
2 ふつうの人びとの資料レスキュー――山形文化遺産防災ネットワークの取り組み 小林貴宏
3 「忘却」される“歴史”――岩手歴史民俗ネットワークが果たすべき役割 安田隼人
4 災害時「未把握資料」の救出・保全をめぐる問題――茨城史料ネットの取り組みから 山川千博
5 歴史資料保全における福島県の課題  本間 宏・阿部浩一
6 ブンカザイを空疎な言葉にしないために――栄村における救出文化財活用に向けての模索 白水 智
7 被災史料を“みんな”で守るために――被災史料保全活動における後方支援の現状と課題 川内淳史・板垣貴志・添田 仁

IV 災害時の地域歴史資料保全の方法をめぐって
1 民間所在史料保全のためのネットワーク形成 松下正和
2 水濡れ史料の吸水乾燥ワークショップの展開 河野未央
3 多仁式漉き嵌め法による資料修復と水損資料の脱水試験 多仁照廣
4 水損史料の凍結真空乾燥処理、および関連処置について 内田俊秀
5 津波被災歴史資料とボランティア 天野真志
6 イタリアにおける被災文書資料救出事例の検討 内田俊秀
7 災害から歴史的環境を守るために――緊急時の体制を構築する 足立裕司

V データ編 吉川圭太
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